時には風になって、花になって。




「それでも私はお前が呼ぶのなら、必ず何処へだって駆け付ける」



───風になろうと、花になろうと。


サヤが前に送った言葉と同じ台詞を繰り返した。

私がいつか生を終えたとしても、その先でサヤが呼ぶのなら駆け付けると言っているのだ。



(サヤは、幸せに…なってもいいの…?)



サヤだけがこんなにも幸せになっていいの?

おっかあの手にしたかった幸せを、娘である自分が奪ってしまっていいの…?


胸につっかえていた思いを初めて吐き出した。



「だったら逆に聞こう。…私は幸せになってはならぬか」



サヤは勢いよく首を横に振るう。

紅覇は幸せになっていいんだよ。
ならなくちゃ駄目だよ。


もう待たなくていいの。

もう、ちゃんと伝えていいんだよ。



「いい加減待つのは御免だ。…今度こそ伝える」



ウタに…?おっかあに…?


きっとそうだと自分に言い聞かせてしまっていた。

期待をするのは良くないって、どうやらサヤはどんどん臆病になってしまっているらしい。



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