時には風になって、花になって。
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かつて妖怪と人間が愛し合った───。
どこからかそんなおとぎ話のような話が飛び交っている。
はて、それは真か嘘か。
「あった…!」
そんな逸話が世に回ってから幾百の歳月が流れただろう。
山奥、けれども下れば人の住む村が見えてくるような自然に囲まれた土地に。
1人の子供が両手に何かを大切そうに抱えて走っている。
パッと見は人のように見えるなりだが、よく見れば耳の先は尖っていて。
ニヒヒッと笑った小ぶりな口から覗く小さな牙。
そして額には小さな角。
「わぁっ…!?」
足を踏み外した幼子は崖からズルッと急降下。
そして滝の流れるが如く、下へ下へと小さな身体は落ちてゆく。
人のような妖のような。
どちらとも言えぬ小娘の年齢でさえも、よく分からなかった。
人間で例えるならば7つ程だろうか。
「わーーー…っ!!!」
細い声。
高らかで、それでいて凛とした音。
かつて、ずっと昔のこと。
そんな声に似た笛の音がどこからか聞こえていたという。