時には風になって、花になって。
カァカァカァ───…
バサバサバサッ!!!
2羽の烏は竹藪から竹藪へ。
赤く染まった空の中を黒色が追いかける。
墓の傍らで寝てしまった少女が目を覚ましたとき、ただならぬ異様な空気感に身体は硬直した。
「うまそうだなぁーーー」
「人間の小娘はうまいと評判だぜ」
「お前はどちらだ?小娘がいいか?それとも魚か?」
寝たふりをしていようか、今すぐにも逃げた方がいいか。
小さな頭でサヤは考える。
母親の墓石の上にどっかりと座る存在は人間ではないこと。
それは見なくても微かな影で理解が出来た。
(だ、誰か……)
少女は物理的に声が出ない。
それが吉と出るか凶と出るか。
このまま身体の震えだけを抑えれば乗り過ごせるだろうか。
でも───…
(おっかあの元へ行ける…?)
少女は思った。
たった1人で生きる毎日。
野盗に母親を殺されてから、孤独だった。
もしここで生を終えたとしたならば、次目覚めたとき、母親に会えるんじゃないかと。
「なぁ、さっさと喰っちまおうぜ」
「そうだな」
スッと、影が小さな身体を覆った。