時には風になって、花になって。




食事を終えるとサヤは一目散に森の端へと駆け、一生懸命に地面の土を掘り起こす。



「なにをしている」



紅覇はすぐ後ろに立った。



(お墓、つくる!)



狼さんのお墓。

それで何が解決するかは分からないけれど、それでも命だ。


世は弱肉強食。

そして命は廻に廻っている。



「こんなことをしたのは初めてだ」



そう言いながらも紅覇は同じように土を掘り起こし、狼1匹を寝かせられる程の空間を作った。

そしてその中へと入れ、再び土を被せる。


風に飛ばされない重さの石を上に置いて、サヤは両手を合わせた。



(……同じだ)



おっかあのときと、おんなじだ。

そのときも今より小さな少女はたった1人でこうして穴を掘り、墓を作った。


じわっと涙が込み上げてきそうになって星空を見上げた。



「サヤ、魚が冷めてしまう」


(うんっ)



おっかあ、サヤはね元気でやっているよ。

くれはっていう鬼さんに出会ったんだよ。

とても優しい人だよ。


キランッと、1つの星が応えるかのように光った。



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