時には風になって、花になって。
「誰かいるか」
「へい只今───って、どうしたんだいその子!」
「教えろ。弱ってる人間には何を与えればいい」
まさか自分から人間に関わりを持つ日が来るとは。
見た目は同じように化けているからこそ見破られはしなかったものの。
こんな農民しか居ない場所に上質な生地で作られた狩衣姿の美男子が1つの店に立ち寄れば、違う意味で視線を集めた。
それに何より腕には幼き少女を抱いているのだから。
「これは風邪だね。あんた何をしたんだい?びしょ濡れじゃないか」
「水を欲していた」
「だからって降りかけたら意味ないだろう?」
女は中へと迎え入れてくれた。
本当は出来るなら自分1人で事を済ませたかったのだが。
苦しそうなサヤを見てしまえば、そういうわけにもいかなかった。
女は慣れた手つきで子を寝かし、囲炉裏でコトコト音を響かせる。
「あんたら兄妹かい?」
「違う」
「それなら随分と若い親子なことで」
「貴様に話す道理は無い」
手厳しいねぇ───と言いながら、横たわるサヤの手拭いを新しいものに変えた女。