時には風になって、花になって。
(くれはは、サヤの…神様)
こんなもの、一時の戯れに過ぎない。
私にとってはあの日お前を助けたわけではない。
あんなものはただの鬼の気まぐれだ。
暇潰しにしか過ぎんというのに。
「全くお前という奴は…」
スゥッと姿形は美丈夫な青年へ戻る。
えへへっと、抱えた小さな存在は笑った。
「そろそろ眠れ。もう怖い夢など見る必要は無い」
(うんっ)
何百、何千年と生きてきた中で。
こんなにも恐れずに触れてくれる存在が居たと思えば、それは儚き命。
子供のお前はこの先、私が瞬きをする間にもとてつもない速さで進化を遂げるのだろう。
「鬼である私がまさか“憐れみ”を知ることになろうとは」
この情は、なんだ…?
親が子へ向ける慈悲のようなものか。
それとも守るべきものを見つけた保護欲か。
それともまだあるというのだろうか。
己の知らない何かが他に。
「…まるで鬼退治ではないか」
1人の鬼は海風に靡く柔い髪へ、そっと頬を寄せた。
*