時には風になって、花になって。
でもどうやったら強くなれるだろうか。
人間である己は紅覇のように空を飛べるわけでもないし、牙も生えてない。
「シャーーーッ!!」
(ごっ、ごめんなさい…っ)
サッと、紅覇の後ろに隠れたサヤ。
目の前には1匹の野良猫。
サヤには無い牙もある、獣の爪もある、そして何より威嚇をされてしまえばこれ以上ない恐怖にサヤを怯えさせることが出来ている。
「退くな。弱味を見せれば漬け込まれるだけだ」
強くなりたいと紅覇に言って。
サヤも妖怪にはなれなくても動物に負けないくらいには、と伝えた。
それならまずは小さな動物を怯えさせるくらいにはなれ───。
それが紅覇から言われた言葉だった。
「シャーーーッ!!ニャオォォン!!」
こんなふうに追っ払える程の強さが欲しいのはサヤなのに。
野良猫に追い回され、乗っかられ、猫からの打撃を食らっているのは人間の小娘であった。
涙目になりながらもサヤもキッと睨んでみる。
「ニ”ャ”ァ”ァ”ァ”ァ”!!!」
(ひっ…!うわぁぁぁんっ…くれはっ)
そんなものすら無意味に終わった。