時には風になって、花になって。
呆れ顔の紅覇は猫の首根っこを掴み、サヤから離れさせる。
仕舞いに鬼としての威嚇を軽く見せれば、野良猫は逃げるように去って行った。
「猫はまだ早かったか。それならあれはどうだ」
落ち込むサヤを元気付けてくれてるのだろうか。
紅覇は次の相手を探してくれた。
「む、なんだお前!おいらとやるってのかいっ!」
動物ではない。
かと言って人でもない。
大きさは先程の猫くらいだが、言葉を話せている存在。
それは妖怪だった。
「おいらは怖い妖怪だぞぉぉぉ!!」
がおーっと威嚇しているつもりなのか。
全然怖くない…。
むしろ可愛いと思ってしまったくらいだった。
この妖怪は人を襲わないという。
村の木の実を食べて、姿すらをも隠せることから害のない妖怪。
「サヤ、こいつを怯えさせてみろ」
(うんっ)
グッと拳を握る。
なんだなんだ?と首を傾げている、見た目は猿のような存在へ近付いて。
紅覇の真似をしてサヤなりの怖い顔をしてみせる。
「は?なんだお前」
(え…)
「全く怖くないぞ。じゃあなっ!」