時には風になって、花になって。




呆れ顔の紅覇は猫の首根っこを掴み、サヤから離れさせる。

仕舞いに鬼としての威嚇を軽く見せれば、野良猫は逃げるように去って行った。



「猫はまだ早かったか。それならあれはどうだ」



落ち込むサヤを元気付けてくれてるのだろうか。

紅覇は次の相手を探してくれた。



「む、なんだお前!おいらとやるってのかいっ!」



動物ではない。
かと言って人でもない。

大きさは先程の猫くらいだが、言葉を話せている存在。


それは妖怪だった。



「おいらは怖い妖怪だぞぉぉぉ!!」



がおーっと威嚇しているつもりなのか。

全然怖くない…。

むしろ可愛いと思ってしまったくらいだった。


この妖怪は人を襲わないという。

村の木の実を食べて、姿すらをも隠せることから害のない妖怪。



「サヤ、こいつを怯えさせてみろ」


(うんっ)



グッと拳を握る。

なんだなんだ?と首を傾げている、見た目は猿のような存在へ近付いて。


紅覇の真似をしてサヤなりの怖い顔をしてみせる。



「は?なんだお前」


(え…)


「全く怖くないぞ。じゃあなっ!」



< 37 / 180 >

この作品をシェア

pagetop