時には風になって、花になって。
何ひとつ効果はなかった。
それどころかサヤの手にしていたキノコを奪われる始末。
ひょいひょいと木の間を抜けて、呆然としている間にもヒュルルルルーーーと冷たい風が吹いた。
(サヤ…全然弱っちい…)
その日の夜は中々寝付けなかった。
決して親の温もりを求めているからではなく、昼間のことへ対する悔しさから。
なめられている、サヤは動物にも妖怪にも。
それでも紅覇という存在が居てくれるから危ない目に遭うことはないけれど。
(またあの人達が来たら…)
紅覇を狙っている2人の妖怪。
あの2人は、そこらで見かける妖怪なんかよりずっとずっと邪悪な雰囲気を持っていた。
紅覇は安全な場所へ退避してくれたけど。
それでもいつ、どんなときに再び現れるかはわからない。
(くれは、…)
宵闇の中、普段木陰に寄りかかるように座っている青年を見つめてみる。
そんな青年が───目を閉じている。
暗闇の中でも分かった。