時には風になって、花になって。
いつも睡眠はあまり取らなくても問題ない、と言っている紅覇が。
昼間のサヤのお願いを聞いてくれて疲れてしまったのだろうか。
(寝てる……)
珍しい。
いつもサヤが泣いていれば声をかけてくれると言うのに。
とても無防備で、だからこそ普段よりも幼く見えた。
じーっと見つめ、サヤは笑う。
───そんなとき。
ガサガサガサッ!!!
(っ…!!)
森の茂みからのそんな音。
それは動物が食べ物を漁るようなものに似ている。
こんな深い森では夜行性の動物が多い。
だからこそ紅覇はいつもサヤを見守ってくれていた。
(でも今は…サヤ1人…)
紅覇は寝ている。
せっかく休んでいるのに起こしたくはなかった。
それなら…サヤが守るしかない。
「シャーーーッ…!!」
それは聞き覚えと見覚えがあった。
(昼間の野良猫だ…っ)
きっとサヤへと仕返しに来たのだ。
傍らには明日の朝に、と残してある魚がある。