時には風になって、花になって。
(サヤ、無理なお願いしちゃった)
数年前、己が鬼の青年へと迷いなく言った言葉はどうしたって言霊にはならないだろう。
それだけは抗えない事実。
ずっと傍に居てくれる───?なんて。
一番残酷な約束をしてしまったのではないか。
「これをお前にやる」
また数日経てば、紅覇は少女に1つのあるものを差し出した。
(なにこれ…?)
長い紐が付けられており、首にかけられる仕様になっている小さく細長いもの。
見たことも触ったこともない素材だ。
サヤが受け取るよりも先に首にかけられた。
「お前は落ち着きが無さ過ぎる。幾度厄介事に巻き込まれたことか」
あぁ、確かに。
7つのときから共に過ごして来たが、3日に1回は助けられている。
先日だって化け狐に危うく命を吸いとられるところだった。
「なにかあったらそれで私を呼べ」
どうやらこれは笛らしい。
先端から空気を流し込めるようになっていて、ふーっと軽く吹いただけでピーーーと細く綺麗な音が鳴った。
ピーーーーッ。
ピーーーーッ。
「用も無いのに呼ぶな」