時には風になって、花になって。




こうして吹けばどんな場所に居たとしてもサヤを助けてくれるのか。

例えば遠い遠い町に居たとしても。

いま居る場所と正反対に立っていたって。


───…サヤが死んでも…?


これだけは思い留めるだけにした。

否定が返ってくるのではないかと怖かったからだ。




「お前が呼ぶのなら何処へだって駆け付けよう」




聞こえていた…?

ううん、違うね。


サヤだって1つ1つ成長している。

これは人間の特権だ。

考え方も話し方も見た目も、全てが成長と共に変わる。



(くれは、ありがとう)



1度死んだ命は2度と生き返らない。

私はいつか、この鬼を置いて遥か遥か遠くへと行ってしまう。


出会ったときからそんなこと分かっていたはずなのに。

人間にとっての一生は、鬼にとっての一瞬だということ。



「…まだまだ小童な奴だ」



ぎゅっと、サヤは目の前の青年へ抱きつく。

いつまでこうしていられるのかな。


そんなことを思いながら、怖い夢を見なくなった次は違う情に悩まされる。

これも人間特有の感情なのかなぁ…。








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