時には風になって、花になって。
「なんだ長松、てめぇも居やがったのか。丁度いいや」
「金返せ、金!!てめぇらは人に借りといて返さねぇ盗人め」
ズケズケと上がり込んでくる男をキッと睨み付ける長松。
「金なら前に返したはずだよ!!あんたらはいつもいちゃもん付けてきて…いい加減にしとくれ!」
「あぁ?なんのことか分からねぇなぁ」
「お、なんだ新しい顔が居るじゃねぇか」
1人の男はそこに立つ青年と少女を見つけた。
サヤは咄嗟にその背中に隠れる。
「ふうん?長松、てめぇガキが居やがったってのか」
その目は卑しいものへと変わった。
身体で返すってのも1つの手だぜ、と呟かれたとき。
どうしてか片方の男が掴んだのはサヤの腕だった。
「あんた…!!その子は関係がないだろう!!」
「黙ってろっ!このぐれぇのガキはいい値が付く」
グイッと襟元を掴まれ、軽々と紅覇から遠ざかる。
(っ…!)
笛を吹こうか迷った。
だけどここで紅覇が鬼だと知られてしまえば。
どうなるかなんて想像ができる。