時には風になって、花になって。
「なんだぁこのガキ。パクパクしやがって。声が出ねぇってのか?」
「おい不良品か?そんなの使いモンにならねぇぞ」
不良品───…
そんな言葉に落ち込んでいる暇はない。
そんなのサヤが一番に分かっているのだから。
「あんた…っ!!」
バチン───!!!
部屋に響いたのは、長松の平手打ちの音だった。
1人の男の頬を女は容赦なくひっ叩いた。
「いってぇな!!なにしやがんだ!!」
「なにが不良品だ!!農民から金集るあんたらの方がよっぽど悪党じゃないか…!!」
「この女…!!おい!ガキと女連れ出せ!!両方売り飛ばすぞ!!」
サヤは出来るだけ抵抗した。
掴んでくる腕を噛み付いて、そうして暴れるだけ暴れた。
けれどもそんなもの敵うはずもなく。
「このガキ…!!」
男の手が天井へと上がる。
真下にはサヤがいて、そのまま遠心力と力を加えながら振り下ろすつもりなのだろう。
(助けて…くれは……っ)