時には風になって、花になって。
そのまま去っていく背中をサヤは追いかけた。
長松に手を振って、村を出ようとしたとき。
「あんた達!!名はなんて言うんだい!!」
女は再び小走りで向かってくる。
「…教えなくとも支障はない」
「あたしがあんのよ!!礼くらいさせなさいっての!!」
「要らんと言っているだろう。お節介が過ぎる」
そんなことを言ってしまうから。
サヤは代わりに長松へ、パクパクとゆっくり教えた。
(サヤと、こっちは、くれは)
薬草、ありがとう。
あと、看病してくれて、ありがとう。
…伝わってるといいな。
そんなサヤの不安は長松の嬉しそうな顔に吹き飛んでしまった。
「───紅覇!サヤ!!何かあってもなくても必ずまた会いに来るんだよーー!!」
紅覇が鬼だってこと、この人ならきっと笑って受け止めてくれる気がする。
サヤは応えるかのように笛を高らかに鳴らした。