時には風になって、花になって。
(サヤ、当分くれはとは会わない!!)
そう叫んでも声が出ない為に何の効果もない。
その代わりに笛を力強く鳴らす。
そう呼んでしまえば、鬼である青年はついて来てしまう。
そんな悪循環だ。
「なにを怒っている。話さねば分からんだろう」
話せる内容だったら話していた。
言葉が出なくても、それでも紅覇にはちゃんと伝わるだろうから。
それでも人間の娘特有のそんなものを、鬼だとしても見た目が眉目秀麗な男性に言えるわけがない。
例え家族同然に暮らして居ようがこれだけは絶対に。
「サヤ、いい加減にしろ」
(わっ!)
ひょいっと腕に抱えられ、そのまま空を舞う。
昔から泣いていたりすればこうして夜風に当たらせてくれたっけ。
(もうサヤはそんなに幼くないのに)
腕の中で呟いてみる。
自分ばかり変わってしまうようだ。
紅覇はずっと変わらない。
ずっと若い。
サヤばかりがどんどん歳を取ってしまう。