時には風になって、花になって。




天から降り立った2人の存在。

1人はニヤッと全てを楽しんでいるように長い三つ編みで纏めた金色を揺らした。


そしてもう1人は体格の大きな男だ。

黒く、全てを闇に包んでしまうみたいに。



(鬼だ…)



本物の鬼だ。

サヤの感覚は間違ってはいないだろう。


今まで何人、何百、数え切れないくらいの人の血を浴びてきた鬼だ。

数年前、初めて奴等を目にしたときに全身を襲った妖気の正体が初めて分かったような気がした。



「2度目は容赦せん」


「はははっ!小娘1匹すら殺せねェお前には言われたかないね」



鎖鎌のようなものを遊ぶように使う黄金色。

小柄な見た目とは裏腹に、崖を引き裂く程の力で向かってくる。



「死ね紅覇ァァァ!!」



サヤはぐっと紅覇の狩衣を掴んだ。

大丈夫、この人は死なない。
この人は強い。


───そんなとき。



「やめろ、金鬼(きんき)。今回の目的は紅覇ではないだろう」



ピタリと、“金鬼”と呼ばれた鬼の動きは止まった。



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