時には風になって、花になって。




するとその視線は紅覇の腕の中にいるサヤへと向けられる。

「そのガキを渡せ」と、漆黒の鬼がポツリと静かに放った。



「5年待ったんだ。ようやく見せてくれる頃合いだろう」


「あん時はガキ過ぎて出来なかったもんな、風鬼(ふうき)」



なにを言っているのかわからない。

それでも狙われているのはサヤだってこと。

それだけの解釈だとしても、紅覇は2人から距離を取った。



「まぁいい。見せてみな、化け狼…!!」



金鬼は右手を空へ掲げ、そこに渦のような邪悪な風を集めた。

それは悪で構成されているもの。


大きく集まったその渦は、真っ先にサヤに向かって投げられる。



(っ!!!)



目映い光が全身を包んで、雷が落ちたような衝撃が流れた。

紅覇が全身を使って張った結界すらもビリビリと貫通してくる。



「くっ……ッ───!」



ドンッと紅覇の身体が突き放される。

そうしたのは他でもなく、彼の腕に抱えられていた少女の仕業。



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