時には風になって、花になって。
サヤが殺すの…?
紅覇をサヤが殺してしまうの…?
サヤは誰なの……?
「ウ”オ”オ”オ”オ”オ”オ”ォォォォ!!」
初めて声を出せたのに。
それは吠えることしか出来ない。
そんな中、片腕の青年はとうとう本来の姿へ変貌を遂げた。
「そうそう、それが妖怪の本能なんだよ紅覇。殺し合って命尽きるまで戦うのが俺達だ」
「面白がるな金鬼。俺達は化け狼を連れて来いとの命令だろう」
「あぁそうだっけ?まぁどうせ紅覇が死ぬさ。少し見物したって許されるだろ」
駄目だと分かっていても本能が邪魔をする。
戦うことを求めている。
血の匂いを常に嗅ぎ付け、そんなものを欲しいと思っている。
(確かにサヤ、化け物だ…)
そして狼は鬼へ飛び付く。
“くれは抱っこ!”
まるで2つの影は、かつて少女が青年へと抱き付いているようだった。
昔からサヤはこうして受け止めてくれる腕が大好きだった。
鬼の青年の温もりは、何よりも優しかったから。