時には風になって、花になって。
これが…サヤなの…?
まるで妖怪と人間の間。
どちらにも属しない中間地点。
「くれはーーー…!」
声が、出た。
それは狼だったときの声帯も交えているからか、随分と低く、野性的な音だった。
きっと今だからこそ出るのだろう。
人間の姿に完全に戻ったとき、再び声は消えるに違いない。
「くれは…っ!腕が……!!」
自分が何者なのか、何ひとつ分からなかったけれど今はそれどころでは無かった。
己を抱える腕は右腕のみ。
反対の腕は、肘の少し上で切り落とされていた。
「…サヤ、…声が出せるのか」
「そんなのどうでもいいよ…!ごめん…っごめんくれは…っ」
ポロポロと涙が血を流す。
どうしよう、どうしたらいいの。
腕を噛み千切ってしまった。
微かにしか覚えてはいないが、狼だった己は確実に大好きだった腕を落としたのだ。
「案ずるな。腕の1つ…どうという事はない」