時には風になって、花になって。




「お前もいつかは私を置いて消えるんだろうな」



人間の命というのは儚いものだ。


サヤは人間だ、妖怪なものか。

私のような醜く残酷で惨めな妖(あやかし)などではない。


それでももし、本当にサヤが妖怪だとするならば。



『ずっと傍に居てくれる…?』



あの日の約束は叶えられるのではないか。



「ふん、…くだらん」



人と鬼は交わることは出来ない。

それが天命であり、変えられない事実だ。



(くれはっ!拾ってきた!)



それから数日間、ずっとサヤは紅覇の失った左腕の代わりを探した。

どこで拾ったのやら獣の腕を差し出してくる。


…勇ましくなり過ぎだろう。



「…駄目だ、合わん」


(えー)



義手でもあれば楽なんだがな…と呟いてしまったのが駄目だったか。

そうだ、この娘は最初も似たようなものだったか。

迷いもなく怯えずトカゲを己に差し出してきた。


───…これも狼の本能か?



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