時には風になって、花になって。
「私は片腕でも平気だ」
まだ腑に落ちないのだろうか。
困ったように眉を寄せて、視線を地面に落としている。
それでも変な罪悪感を感じさせていなくて良かった。
「サヤ、お前もあまり無理はするな。なにがあるか分からぬ」
それにあれは紛れもなく私のせいでもある。
あの妖鬼の2人に後をつけられるようになったのは私と関わったからだろう。
そんな紅覇の心配とは裏腹に、少女は何かを思い付いたようにガバッと顔を上げた。
「…なんだ」
その顔はキラキラと光で満ちている。
笑っているのだ。
決して無理をしているわけではない。
サヤは紅覇の左腕を指差すと、今度は自分の左腕に視線を移した。
(サヤ、くれはの左腕、なる!)
パクパクと伝わった。
だから───と続けて、何かを言おうとする。
小ぶりな唇に指を当て、そのまま紅覇の形の整った薄い唇をちょんちょんと人差し指でつついた。
(だから、くれは、…サヤの声!!)