時には風になって、花になって。
(いたい…っ)
選択肢は2つある。
1つはすぐに抱えて空を飛び、夜風に当たらせること。
もう1つはとりあえず腕の中で落ち着かせることだ。
どちらが良いか───そう紅覇が考えている間にも、突進するかの如くサヤはその腕の中に抱き付いてきた。
ピーーーッ…。
ピ~~……。
その音すらもいつもより弱々しい。
「…明日、私が出向こう」
サヤは首を横に振る。
村の娘と話してみたい───そんな少女の願いは呆気なく散ってしまったようで。
恐らくは声が出ないからだろう。
同い年程の娘達に何か言われたか…。
(これは、…サヤの、問題)
そう言っているのに、笛の音は助けを求めているようにしか聞こえない。
こういう場合、鬼であり男である己はどうしたら良いのか全くもってわからない。
サヤが腕の中で眠る間にも考え考え抜いた結果。
紅覇が出した答えはというのは───…。