時には風になって、花になって。
「すげぇ別嬪じゃねぇか!おい、声かけようぜ!」
「馬鹿野郎っ!相手にされねぇに決まってんだろ!」
普段は女の視線を集めている男が、今日は村の男の視線も集めた。
それもそのはず。
紅覇はどこからどうみても女に化けているのだから。
「サヤ、行くわよ」
声まで女だ。
まるで姉が出来たみたい───サヤは違和感すら感じさせない存在感を改めてすごいと思った。
そしてサヤが先日1人で歩いた同じ道を並んで歩く。
目指すは、屯う女子達の元へ。
「すみません、ちょっといいかしら」
紅覇が声をかけると、数人の女は目をキラキラと輝かせる。
「綺麗な人…」
「あたしこんな美人見たことないよ」
「あたしも…!」
それでもその隣に立つサヤを目にすると、怪訝そうな眼差しに変わった。
そしてサヤまでも紅覇の背中に隠れる。
「この子は私の妹なの。仲良くしてあげて欲しいのだけど…」