時には風になって、花になって。
1人の少女は首を横に振った。
「お姉さんのお願いでもそれは聞けません」
ほう、この娘は私の言うことが聞けぬというのか───。
男である紅覇は思うが、それでも笑顔を決め込む。
「あらどうして?」
なるべく優しく聞いてみる。
「だって話せないんですもの。それじゃあ何も出来ないじゃないですか」
「そうそう。なに考えてるのかも分からないし、普通じゃないもの」
「居ないのと変わらないわ」
1度乗っかってしまえば少女達の醜い言葉は止まることを知らない。
紅覇の袖をぎゅっと握りしめたサヤ。
「…そう、でも1つだけ良いかしら」
「なんですか?」
「頬の傷はあなた達が叩いたものよね?」
ばつの悪い顔で反応したにも関わらず「違います」なんて答える女。
全く、こんな者達と仲良くする方が勿体ないだろう。
時間の無駄でしかない。
友が欲しいのなら私がなってやる。
「謝ってくださる?」
「ど、どうしてですか!」
「だってこの子が声を出せないという理由で打ったのでしょう?
そんな理不尽な話、聞いたことないわ」
「い、いやです!!」