時には風になって、花になって。
紅覇はだんだん面倒になってきた。
声が出なくとも貴様らからしたら普通ではなかったとしても。
それでもサヤの方が聞き分けもよく、素直でいい子だ。
「…謝れと言っているだろう」
ボンッ───!
煙が一瞬姿を隠し、そうして晴れたとき。
女達の目の前に先程まで居た綺麗な女は消えていて。
その代わりに同じくらい美丈夫な青年が立っているものだから。
「あれ…っ?お兄さん…?え……」
「どういうこと…?やだ、格好いい…!」
「あのっ、お茶でもどうですか…!妹さんも一緒に…!」
途端に態度が逆転。
「あっずるーい!」なんて言ってはしゃぎ出した。
全く馬鹿馬鹿しい。
青年の睨み付ける視線に、女達は揃って背筋を伸ばした。
「よくもこいつを打ってくれたな。誰の連れだと思っている」
「お、お兄さん…」
「誰が兄だ。ちなみに姉でもない」
えっ、と村の娘は目を開く。
所詮女など色恋にしか興味がないのだ。
それに比べ純粋に貴様らと仲良くなりたかったサヤの気持ちを無駄にした女共に、どこか腹立たしかった。
「私は貴様らなんざに好かれるくらいならば、この娘に想われていた方がいい」
ひょいっとサヤを片手に抱き、空を駆ける。
やはり次からは共に行こうと胸に誓った紅覇なのであった。
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