時には風になって、花になって。
とても嬉しい言葉を言ってくれた。
紅覇がそんなことを言ってくれるのは初めてだった。
今までどんなにサヤが紅覇に笑いかけ、抱きついても言葉で返されたことはなかったのに。
(…嬉しいのに、)
嬉しいはずなのに。
それでも素直に喜べない自分がいた。
『話せなければ意味がない』
『普通じゃない』
『居ないのと変わらない』
同い年の女からそんな言葉を連続で言われてしまったからだろう。
そんなものを紅覇に聞かれたからだ。
それがどこか嫌だった。
(普通ってなに…?)
サヤの声が出ないのはおかしいことなの…?
異常なの…?
だからみんなに気を遣わせてしまうの…?
紅覇がああ言ってくれたのだって、サヤに気を遣ってくれたから…?
「すまなかった」
紅覇は空を飛ぶ中で、サヤへと謝った。
どうして紅覇が謝るの?
なにも悪いことしてないのに。
それどころか女になってまでもサヤとあの子達を近付けようとしてくれた。