時には風になって、花になって。




「私が余計なことをせねばあそこまで言われることは無かった」



でもそうじゃなかったら、紅覇のあんなにも嬉しい言葉は聞けなかった。

今日だってサヤの全部を庇ってくれた。


紅覇と過ごしてわかったことは、全てにおいて無駄なことは無いということだ。

全部に意味がある。

それを知れたのは紅覇に出会ったからなんだよ。



(ぜんぶ、伝えられたらいいのに…)



いま思ったこと、何ひとつ伝えられない。

やっぱり声が出ないのはすごく嫌だ。
簡単な言葉しか伝えられないからモヤモヤする。


サヤは首にかかる笛を手にして、そっと息を吹き込む。


ピーーーッ。

ピ~~~ッ!


嬉しいんだよ、紅覇。
サヤね、ありがとうって言ってるよ。

そう思ってるんだよ。



「…わかっている」



ふっと笑ったような気がした。

そんなものが嬉しくて、サヤはもっともっと音を響かせる。



(くれは、大好きだよ。)



ピーーーッ!!


少女を抱える力が、微かに加わったような気がした───。



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