時には風になって、花になって。
「…私なら大丈夫だ。残されることには慣れている」
そんな哀しい言葉は言っちゃ駄目なんだよ。
そんなのに慣れちゃ駄目。
サヤね、自分が死ぬよりも紅覇を残して行ってしまう方が辛いよ。
「私はお前のその顔を見る方がずっと苦しい」
サヤ、笑ってる?
おかしいなぁ…笑ってるつもりだったのに。
でも紅覇も同じなんだよ。
ずっと、泣きそうな顔してるの。
ピーーッ…。
言葉に出来ないから響かせた。
それでもきっと、この男には全て伝わっているのだろう。
「…命は平等だ」
青年は呟いた。
昔より大きくなったサヤ、片方しかない紅覇の腕。
人間が年老いてゆくように、日に日に変わりゆく形。
「妖怪だって何も不死身ではない。年月が違うだけで死からは逃れることは出来ない」
これはきっと彼なりの励ましだ。
いつかはみんな同じ場所へ行く。
いつかはまた新しいものへと変わる。
だけどそのとき、今のようにこうして居れたらいいなぁと少女は思った。
*