時には風になって、花になって。
昨夜からしんしんと降り注ぐ白く柔らかい結晶は、翌朝には辺り一面に積もっていた。
未だに足跡のついていない純白の絨毯へと小さな形が足されてゆく。
ピーーーッ!!
はしゃぐ声が聞こえない代わりに、少女の音が紅覇の耳に届いた。
「雪か…」
春は桜、夏は蝉、秋は紅葉。
そして冬は雪。
「サヤ、そろそろ戻れ。風邪を引く」
少女が駆け回っては転んでを見つめているだけで、いつの間にか時間は過ぎていた。
よく飽きないものだ。
紅覇がそう声をかけてみても、サヤは楽しそうに笑うだけ。
「なにを作っているんだ」
だからとうとう青年から近付いた。
ちょこんと座った背中の前に、雪の玉を重ねて置物のようなものを作っている。
(雪だるま、だよ!)
聞いたことがあった。
この季節になれば人間の子供がこうして道端に同じようなものを作っていることは紅覇も目にしていた。
雪だるまというのか…。
それにしても不恰好だ。