時には風になって、花になって。




「もう少し右側を削ってはどうだ。いや違う、それは削り過ぎだ」



気付けば紅覇はあれやこれやと指示していた。

その通りに修正していく小さな手。


そして青年もまた、同じようにしゃがんで冷たい塊に触れた。



「ふっ、お前に似ている」


(似てないもんっ)



小枝で口を作って石で目を作る。

葉を頭に乗せれば、こういう妖怪が何処かに居るのではないかとも思ってくる。



(明日には、無くなっちゃう…?)



所詮は雪だ。

冬だとしても、時間が経てば水になり流れてしまうだろう。

それに己の妖術は余計に溶かしてしまう。



「…また作ればいいだけだ」



溶けたなら何度でも。


そんな言葉を言っている自分に驚いた。

破壊することしか出来ない種族の1人が、再生を促すなど。



「…綺麗だな」



月の光が一面に広がった山々を照らす。

まるで幻想的な情景に、ポツリと呟けば隣に立つサヤも頷いた。


とても静かだ。

とても静かで、不気味で、それでいて冷たい。

それなのに誰かと過ごす夜は何故こんなにも温かいのだろうか。



< 88 / 180 >

この作品をシェア

pagetop