時には風になって、花になって。
「もう少し右側を削ってはどうだ。いや違う、それは削り過ぎだ」
気付けば紅覇はあれやこれやと指示していた。
その通りに修正していく小さな手。
そして青年もまた、同じようにしゃがんで冷たい塊に触れた。
「ふっ、お前に似ている」
(似てないもんっ)
小枝で口を作って石で目を作る。
葉を頭に乗せれば、こういう妖怪が何処かに居るのではないかとも思ってくる。
(明日には、無くなっちゃう…?)
所詮は雪だ。
冬だとしても、時間が経てば水になり流れてしまうだろう。
それに己の妖術は余計に溶かしてしまう。
「…また作ればいいだけだ」
溶けたなら何度でも。
そんな言葉を言っている自分に驚いた。
破壊することしか出来ない種族の1人が、再生を促すなど。
「…綺麗だな」
月の光が一面に広がった山々を照らす。
まるで幻想的な情景に、ポツリと呟けば隣に立つサヤも頷いた。
とても静かだ。
とても静かで、不気味で、それでいて冷たい。
それなのに誰かと過ごす夜は何故こんなにも温かいのだろうか。