時には風になって、花になって。
小さな両手を使って、サヤは表現して見せた。
「7つ…所詮はまだ小童か」
鬼の自分には人間のことなど分からない。
だが大人でないことはわかる。
親の温もりを求める小さな命だ。
だからこそ、私を親だと勘違いしているのではないかとも紅覇は思った。
そうだとしたならば厄介だ。
ぎゅるるるるるるーーーー…
静かな夜に響いた音。
少女は自分のお腹を押さえながら、チラッと鬼妖怪の青年を見つめた。
「そうか、昨日魚を食わせただけだったな」
人間というのはどれくらいの頻度で腹が空くのか。
この歳の小娘はどれくらいの量を必要とするのか。
何ひとつわからない男にとっては分かりやすい合図だ。
「待っていろ」
この時間に1人で狩りへと出させれば簡単に猪にでも喰われてしまうだろう。
火の近くに居させれば動物は寄っては来まい。
「サヤ、これで3日は持つか」
頬に付着した血は狩った狼のもの。
鷲掴んで焚き火へと戻れば、スウスウと静かな寝息が聞こえる。
「…着物も新しくすべきか」
青年は呟いた。