時には風になって、花になって。
妖怪の苦悩
「ほらあの人じゃない!?心優しい妖怪様って!!」
「馬鹿ねっ!あんな綺麗な美丈夫が妖怪なわけないでしょっ」
いいえ、正解です。
町の女性の皆さん、彼が心優しい妖怪様ですよー。
「あれが妖怪を駆除してくれるという使いの者か?」
「あぁ。噂じゃ男の方は鬼らしい」
時代はどんどん変わってゆく。
月日が流れれば流れる程に、人の世も妖の世も過去を忘れるようになった。
「また拗ねているのか、サヤ」
(拗ねてないっ)
ピーーーーッと、笛を吹いてやった。
笑顔の増えた妖怪様はそんなものにすら柔らかい表情をしてしまうから。
そんなものをたまたま見つけた村の女達は、きゃあきゃあと黄色い声を上げた。
───あれから、2年という季節が流れた。
「ありがとうございましたっ!とても助かりました…!」
「2度と妖が来れぬよう結界を張っておいた。これで危害は出ないだろう」
「感謝致します妖怪様…!」
あれから紅覇と私───サヤは、村を襲う妖怪を駆除しながら色んな土地を旅していた。
14歳となった私は幼い頃のべべは卒業し、いつの日からか紅覇に貰った水干衣装を身に纏って村の平和を守っている。