BATEL
第15章 友達
1階の食事スペースで朝食を4人で囲んだ。
食パンに目玉焼き、ベーコンをカリカリになるまで焼いたものだった。
レイ
(虫じゃなくてよかった.....)
クロエ
(虫じゃないんだ.....残念。)
ゾーイ
「頭いてぇ.....」
メル
「あんたは飲みすぎよ。」
ゼフ
「初任務でだいぶ稼いだようだな。だからといってこの宿から出んじゃねーぞ?」
ターナ
「え、他行くの?やだよ!」
クロエ
「大丈夫だよ。この国にいる限りこの宿から離れないよ?」
ターナ
「わーい!」
ゼラ
「ターナ。洗濯干すの手伝って。」
ターナ
「はーい!」
レイ
「なあ、ランク上がるまでどれだけ任務こなすんだ?」
ゾーイ
「さあな。」
クロエ
「ランクは別に上げなくても旅ができればいいよ〜。」
レイ
「ランク上がらないと行くことができない場所だってあるんだぞ。」
クロエ
「え、それってマジ?!」
メル
「まあ、まだ初任務こなしただけだしそこまで急がなくてもいいんじゃない?」
ゼフ
「数だけじゃねえぞ。数と今より高ランクの任務をどれだけ受けたか。らしいぞ。」
レイ
「そうなのか.....」
ゾーイ
「おいおい、いきなり難しい任務とか取るんじゃねーだろうな?」
メル
「メル死にたくないいいいいい!!」
クロエ
「ま、まあナーシャさんに任せてみよう。ゼラさんご馳走様あー!!」
ゼラ
「今日も頑張っておいで。」
レイ
「んじゃ行きますか!」
ゾーイ
「おう。」
クロエ
「ルナ?ミルクはもういいの?ほらおいで。」
ルナはクロエのフードの中に隠れた。
メル
「メルもできればクロエのフードに潜りたい....」
4人は出発した。
また昨日と同様冒険者ギルドには人が多かった。
クロエは掲示板を見た。
『採掘場の未探索地の調査 ランクC』
新しい任務の張り紙があった。
レイ
「今日は昨日の森近くの川ででけぇ魚?ワニ?を討伐だ。それからキノコの採取。」
メル
「魚とワニ結構違うよ?本当に魚なんでしょうね?昨日なんか犬とか言って怪物だったじゃない!」
レイ
「んまあ、大丈夫だろ。討伐任務も採取任務もEランクだ。」
ゾーイ
「問題ないな。」
レイ
「クロエ。頼む。」
大きな川の側の草木に隠れクロエは3人に唱えた。
「重力魔法」
「加速魔法」
川から出てきたのは像よりも大きなワニだった。
レイ
「あれがファイアーアリゲーター」
ゾーイ
「一匹しかいねえぞ。」
レイ
「一匹だけでいいんだ。」
メル
(雷よ。雷鳴と共に散れ。)
川の頭上から大きな雷鳴が大きなワニに直撃した。
ズドーーーーンッ!!!
レイとゾーイは怯んだファイアーアリゲーターの腹に剣を突き刺し大量の血が川を染めた。
レイ
「硬い皮膚だな。」
ゾーイ
「ん?....お....おい!!」
ファイアーアリゲーターの口は大きく開け炎を吐き散らし3人は水の中に潜った。
クロエ
「火?ワニから火?!」
水の中からゾーイは潜みワニの頭に近寄った。
ゾーイ
「クッソがあああああ!!」
大剣はファイアーアリゲーターの首に入り血と共に飛んだ。
レイ
「はぁ....はぁ....」
ゾーイ
「おい、レイ。Eランクの任務でも結構疲れるな....はぁ....」
レイ
「だな....」
クロエ
「みんなー!ワニって耳あるのー?」
メル
「....確かに....どする?」
ゾーイ
「首落としたんだし首ごと持ってくしかないだろ。」
レイ
「次はキノコだな。」
メル
「火を吐くキノコだったらただじゃおかないわよ。」
レイ
「んなことねーだろ。」
3人は川から上がりクロエの元に登った。
クロエ
「ねぇ.....地面から火が吹いてる。」
レイ
「はぁ?!んなわけねぇだろ....なんだあれ。」
ゾーイ
「キノコから火が吹いてんぞ......」
メル
「びしょびしょで気持ち悪かったところよ。ちょうどいいわ。ゾーイ。レイ。乾かしに行くわよ。」
メルはヤケになって魔法を使わず杖を振り回し火を吹くキノコを叩き潰した。
レイ
「おーい。潰すなら綺麗に潰せよー!持って帰れねえだろー!行くか。」
ゾーイ、メル、レイは服を乾かしながらバッサバッサキノコを狩った。
クロエは帽子の中に川の水を入れて火を消しながら手でもぎ取った。
クロエ
「大きくて赤くて美味しそう。。ルナ?食べれるかな?」
ルナはキノコの匂いを嗅いで鼻を前足で押さえもがいた。
クロエ
「やめといたほうがいいね。」
レイ
「こんなもんでいいだろー。」
ゾーイ
「もう火一つ吹いてないし服も乾いた。袋に詰めるか。」
メル
「ちょっとー!2人ともきてー!」
レイ
「ん?」
ゾーイ
「これ、キール村でよくなるヘミダケじゃねえか!」
レイ
「ちょうど3つあるな。クロエに内緒で食っちまおうぜ。」
メル
「えー、でも....」
ゾーイ
「いいじゃねえか。食っちまったら分からねーよ。」
キール村では小川によくヘミダケがよくなり生でも食せる甘くて美味しいキノコでおやつによく並んだ。
クロエ
「皆どこ行っちゃったんだろう。」
袋には赤いキノコがパンパンに詰めてあって側にはレイとゾーイとメルが横たわって泡を吹いていた。
クロエ
「ちょっと!何があったの?!」
ルナは側に転がっていたヘミダケを嗅いだ。またさっきのように前足で押さえもがいた。
クロエ
「ヘミダケ?でもルナが嫌がってるから違うの?私に内緒で.....とりあえずなんとかしなきゃ!!」
クロエは少し苛立ちながらもそれよりこの横たわった3人をなんとかしないとという気持ちの方が大きかった。
クロエ
「どしよ....重力魔法でも流石に3人持つのは無理....助けを呼ぼう。」
クロエは近くにいる冒険者を探した。
クロエ
(早くしないと命に関わりそうな気がする。早く!早く!!」
クロエは自分に加速魔法をかけて全速力で探した。
クロエ
「!!」
空まで煙を上げ魚の匂いがする。
どうやら誰かが焚火で魚を焼いていることに気づきそこまで走った。
「ぎゃはははははは!」
4人の笑い声が聞こえた。
クロエ
「あそこだ。」
クロエ
「す....すみません!!はぁ....はぁ....」
4人はクロエより少し年上のように見えた。1人パーティリーダーだと思われる顎に髭の生えた青年の人間族は声をかけた。
「お嬢ちゃんどした?」
クロエ
「仲間が....仲間が変なキノコ食べて倒れたんです!!」
「多分ナイトマッシュルームですね。」
褐色の肌のハーフエルフの女性がそう言った。
「とりあえず案内しろ。」
クロエは4人に加速魔法をかけ横たわった3人まで案内した。
「か....加速魔法....め....珍しい....ですね....」
内気で身長も小さな人間族の女性がそう言った。
クロエ
「あそこです!」
「あーやっぱナイトマッシュルームですね。食べたらすぐ死ぬわけじゃありませんが解毒が必要ですね。確か...余っていたような...」
ハーフエルフの鞄から紫色の液体を取り出し3人は少しずつ呑んだ。
「意識はあるようですね。これで大丈夫です。とりあえずゴレアリアに連れて....」
「だりぃなあ〜」
そう言ったのは髪が長めで片目が隠れ黄緑色の珍しい髪色をした人間族の青年だった。
クロエ
「今日2つEランクの任務の半分の報酬あげますので運ぶの手伝ってくれませんか....」
「今日俺らに1杯ずつ奢ってくれよ!」
そう言って内気な女の子以外は1人ずつ背負った。クロエはゾーイ、レイ、メルそして任務鞄に重力魔法をかけた。
「うおっ軽っ!!行くぞ!」
ゴレアリア大国に着きハーフエルフは
「病院は大丈夫だと思います!とりあえず宿まで行って寝かせて安静にしましょう。」
そう言ってクロエは宿のハニー・シーまで行った。
ゼフ
「おー!クロエ!今日は早ぇじゃねえか...ってどしたこいつら!」
クロエ
「変なキノコ食べたみたい。」
ゼフ
「おーい!ゼラ!」
ゼラ
「どしたんだい!とりあえず部屋まで!!」
男部屋にベッドを一つ持っていきメル、レイ、ゾーイを寝かせた。
ゼラ
「今はまだ熱がひかないから安静にしないとね。」
クロエ
「本当にありがとうございます。本当にありがとう。」
「礼はいいから酒奢れよ!んじゃとりあえず後でメインストリートの冒険者ギルド集合な。」
そう言って4人は宿から出た。
ゼフ
「なんだ?友達か?」
クロエ
「この3人を担いでここまで運んできてくれたの。」
ゼラ
「雰囲気あなたたちに似てるわね。」
そう言ってゼラは3人の額に濡れたタオルを置いた。
ゼラ
「ナイトマッシュルームだね。この症状。よく冒険者が間違えて食べて死ぬってのはよく聞く話だよ。あははは。」
クロエ
「はぁ。。」
ゼフ
「クロエに内緒で食ったのがバチが当たったんだろ。」
ゼラ
「今日は目を覚まさないだろうね。地獄は明日だよ。腹痛とめまいと吐き気と...まあ明日、明後日はろくに動けないだろうさ。」
ゼラ
「さっきの子たちにお礼行っときな?あとは任せて。」
クロエ
「そうだった!!ゼラさんありがとう!」
クロエの後を追うようにルナも走り出した。
ナーシャ
「今日の報酬ね。.....あれ?他の3人は?」
クロエ
「食あたりで.....」
ナーシャ
「へぇ。クロエちゃんは鋼の胃袋持ってるのね!」
クロエ
「いや....そういうわけじゃ....」
「おーいたいた!」
クロエ
「あ、さっきはありがとうございます。ほんと助かりました。」
ファリア
「そんなかしこまらんでいいって!俺、ファリアな。よろしく。」
ファリアは奇策で自信たっぷりでなんでもポジティブに考える青年だった。背中には大きな斧を背負っていた。
ナージャ
「わ....私は...ナージャ...さっきのあなたの...魔法...すごいと...おもう....」
ナージャは内気で恥ずかしがり屋でいつもみんなの後ろに隠れる女の子。魔術師で長い杖の先端に赤い球が埋め込まれていた。恐らく火属性だろう。
レイナ
「私はレイナです。薬士でありながら冒険をしています。」
珍しい非戦闘系で医療係。珍しい薬草を見つけては調合をしているという。ハーフエルフ族。
ムゼイア
「ふぁ〜。僕はムゼイア。ただのムゼイアだぁ。ふぁ〜。」
大きなあくびをしながら眠たそうにそう言ったのはいつもめんどくさがり屋だが戦闘になると一番に敵を仕留める弓の名人らしい。
クロエ
「私はクロエ。バッファーとして魔術師をしてます。」
レイナ
「敬語はやめましょう。恐らく私たち同期ですよ。」
クロエ
(レイナさんに言われても.....)
「じゃ....じゃあ....よろしくね!」
ファリア
「おう。」
クロエ
「待ってて!さっきの報酬の....」
ファリア
「あー。いーのいーの。報酬はいらねえよ。それよりさ、それよりさ!1杯奢ってくれよ。」
クロエ
「えー報酬は?!」
レイナ
「話し合った結果そうなったんですよ。ほら、行きましょう。」
クロエは4人に押され冒険者ギルドを出た。
クロエ
「さっき同期って....」
ファリア
「俺らもEランクとかCランクばっかの任務だ。ほらこれが証拠。」
4人ブロンズの指輪をしていた。
ファリア
「つい先週冒険者なったばかりの駆け出しってやつさ。」
クロエ
「私たち昨日が初任務で2日前にこの国に来たばかり。」
レイナ
「それにしても先ほどのバフは凄かったですよ。他に強化魔法をお持ちですか?」
クロエ
「強化魔法は...みんなできるでしょう?」
ナージャ
「い....いえ、皆...破壊魔法を....」
ムゼイア
「そーゆーこーと。皆破壊魔法の方ばかり極めてるのが普通。足疲れたよー。」
レイナ
「あと少しですよ。ムゼイアさん。魔術師は皆破壊魔法に偏り強化魔法は誰もしないんですよ。だって、雷や炎をバーンッてするの気持ちいんじゃないですか?」
クロエ
(なんかメルもそんなこと言ってたっけ....)
ファリア
「着いた!踊る貝!」
昨日4人で行った『踊るキリ貝』だった。
ナージャ
「わっ!あの人....また...」
アリ姉
「おら!とっとと帰んな!」
ドアーフ族をいとも簡単に投げ飛ばしていた。
ファリア
「おーい!女将さん!」
アリ姉
「あんた誰だい?」
クロエ
(やっぱり人の顔と名前覚えないんだね...)
ムゼイア
「ここ5日連続して来てるのにね。とりあえず座ろうよ。」
アリ姉
「悪いね。うちは名前も顔も覚えれないんだよ!だはははは。おや、クロエじゃないかい?」
クロエ
「やあ、アリ姉。」
アリ姉
「こんな昼間から呑むのかい?若いのに強いんだねぇ。」
クロエ
「アリ姉も一緒にどう?」
アリ姉
「ちょうど最後の客を帰らしたとこだよ。ほら、入んな。」
ファリア
「エール4つ!それと....」
アリ姉はクロエを見て、
アリ姉
「バテルだね。分かってるよ。それとうちも一本もらうよ。」
ファリア
「ぷぁはああー!うんめぇ!」
アリ姉
「そういえばクロエ、あんなのパーティってそんな頭の悪そうな子たち引き連れてたかい?」
クロエ
「頭が悪いのはうちのパーティだよ。拾ったキノコ食べてお腹壊したの。」
ムゼイア ファリア ナージャ レイナ
(言えてる....)
アリ姉
「だははははははは。そうかいそうかい。で、こいつらに助けてもらったってわけかい。」
クロエ
「そゆこと!でも驚いた。昨日来た酒場だもん。」
ファリア
「この国にいくらでも呑むとこはあるがまさか行きつけのとこが一緒なんてな。」
ナージャ
「行きつけでも....名前は覚えて...くれてな...」
レイナ
「エールおかわりお願いします。んで、クロエさん。あの調子じゃ3人とも2日はろくに動けないと思います。どうでしょう、2日間だけうちのパーティに入り任務を一緒にしませんか?」
クロエ
「あ....あの....」
アリ姉
「いいんじゃない?クロエ。どうせ暇なんだろう。裏切って別のパーティに入るわけじゃないんだし。」
クロエ
「そうじゃないんだけど...いや、ごめんなさい!やっぱり無理です!」
ファリア
「振られたかー。まあ、しょうがねーな。」
クロエ
「そうじゃないの....暇だから別のパーティで任務をするってのは....やっぱ....違うというか、4人で頑張ろうって決めたから...その...」
クロエは涙目になりアリ姉はそれに気づきフォローをする形で喋った。
アリ姉
「まっクロエがそう言うなら諦めな。無理言っても多分めげない子だよ。この子。同期だろ?お前たち。呑み仲間として最初は仲良くやんな。」
クロエ
「ご、ごめんなさい!!」
ナージャ
「あ.....あやまらなくて....も....大丈夫だ....よ....」
ムゼイア
「まあ誘うのを目的にここ呼んだけど断られちゃしょーがないねー。」
レイナ
「友達から始めましょう。」
ファリア
「だな。強化魔法なんてかけられたことなかったからうちに欲しい!って思っただけだ!」
レイナ
「やっぱ引き込もうとしてたんじゃないですか。」
そこから村のこと、メルーン王国のことファリアたちの故郷のことを話し合い呑んで食べて最終的に大騒ぎして楽しんだ。
アリ姉
「またきなよー。」
クロエ
「ありがとう!アリ姉!また来るよ!」
ファリア
「ぎゃはははははは!女将さんまたなー!」
ナージャ
「ちょっとぉ...飲み過ぎちゃいましたぁ〜」
クロエはムゼイアの肩を持ちヨタヨタ歩いた。
クロエ
「ちょっとぉームゼイアさん。しっかりして!」
ふにっ
クロエ
「ん?」
何か当たったような....胸?
ムゼイアさんの胸をもう一度触ってみる。
ふにっふにっ
クロエ
「えええ?!ムゼイアさんって女の子なのー?!」
ファリア
「なんやお前、知らんかったんか。ムゼイアは女だぞー。」
ムゼイア
「そーだぞー。女の子だぞー。そんな触るなー。」
クロエ
「ん、ま、まあいいや。宿ってどこー?」
ファリア
「着いた。近いだろ?お前らの宿よりはいいとこだぜー。」
クロエ
「近いって言っても私たちの宿の目の前じゃん!窓開けたら見える!」
クロエの宿の目の前だった。
ナージャ
「今日はありがとう〜!!」
クロエ
(この子お酒呑んだ方が普通に話してくれるんじゃない?)
ファリア
「今日はサンキューなー!ちなみにこいつらは女だけど俺は男だぞー!」
クロエ
「それは知ってるよ!」
ファリア
「何かあったら何でも言えよ!あいつら回復したらよろしく言っといてくれー!」
クロエは大きく手を振り宿に戻った。
クロエ
「ゼラさん。3人の調子はどーお?」
ゼラ
「今日は目を覚まさないわ。ほら、お風呂入ってきなさい、」
クロエ
「見てくれてありがとうございます。」
ゼラ
「なあに言ってんのよ。ほら、お風呂!お風呂!」
クロエ
(なんかママみたいで落ち着くな...)
お風呂も入り女子部屋に入った。
クロエ
(そうだった。メルは男子部屋に隔離させたんだった。)
窓の側の椅子に腰を下ろした。
メルと昨日一緒に呑んでいたバテルが1瓶半分くらいの量が机に置かれていた。
瓶のまま口をつけた。
クロエ
「いつからこんなに呑むようになったんだろ....3日前じゃん!)
クロエは飲みながら手紙を書いた。
食パンに目玉焼き、ベーコンをカリカリになるまで焼いたものだった。
レイ
(虫じゃなくてよかった.....)
クロエ
(虫じゃないんだ.....残念。)
ゾーイ
「頭いてぇ.....」
メル
「あんたは飲みすぎよ。」
ゼフ
「初任務でだいぶ稼いだようだな。だからといってこの宿から出んじゃねーぞ?」
ターナ
「え、他行くの?やだよ!」
クロエ
「大丈夫だよ。この国にいる限りこの宿から離れないよ?」
ターナ
「わーい!」
ゼラ
「ターナ。洗濯干すの手伝って。」
ターナ
「はーい!」
レイ
「なあ、ランク上がるまでどれだけ任務こなすんだ?」
ゾーイ
「さあな。」
クロエ
「ランクは別に上げなくても旅ができればいいよ〜。」
レイ
「ランク上がらないと行くことができない場所だってあるんだぞ。」
クロエ
「え、それってマジ?!」
メル
「まあ、まだ初任務こなしただけだしそこまで急がなくてもいいんじゃない?」
ゼフ
「数だけじゃねえぞ。数と今より高ランクの任務をどれだけ受けたか。らしいぞ。」
レイ
「そうなのか.....」
ゾーイ
「おいおい、いきなり難しい任務とか取るんじゃねーだろうな?」
メル
「メル死にたくないいいいいい!!」
クロエ
「ま、まあナーシャさんに任せてみよう。ゼラさんご馳走様あー!!」
ゼラ
「今日も頑張っておいで。」
レイ
「んじゃ行きますか!」
ゾーイ
「おう。」
クロエ
「ルナ?ミルクはもういいの?ほらおいで。」
ルナはクロエのフードの中に隠れた。
メル
「メルもできればクロエのフードに潜りたい....」
4人は出発した。
また昨日と同様冒険者ギルドには人が多かった。
クロエは掲示板を見た。
『採掘場の未探索地の調査 ランクC』
新しい任務の張り紙があった。
レイ
「今日は昨日の森近くの川ででけぇ魚?ワニ?を討伐だ。それからキノコの採取。」
メル
「魚とワニ結構違うよ?本当に魚なんでしょうね?昨日なんか犬とか言って怪物だったじゃない!」
レイ
「んまあ、大丈夫だろ。討伐任務も採取任務もEランクだ。」
ゾーイ
「問題ないな。」
レイ
「クロエ。頼む。」
大きな川の側の草木に隠れクロエは3人に唱えた。
「重力魔法」
「加速魔法」
川から出てきたのは像よりも大きなワニだった。
レイ
「あれがファイアーアリゲーター」
ゾーイ
「一匹しかいねえぞ。」
レイ
「一匹だけでいいんだ。」
メル
(雷よ。雷鳴と共に散れ。)
川の頭上から大きな雷鳴が大きなワニに直撃した。
ズドーーーーンッ!!!
レイとゾーイは怯んだファイアーアリゲーターの腹に剣を突き刺し大量の血が川を染めた。
レイ
「硬い皮膚だな。」
ゾーイ
「ん?....お....おい!!」
ファイアーアリゲーターの口は大きく開け炎を吐き散らし3人は水の中に潜った。
クロエ
「火?ワニから火?!」
水の中からゾーイは潜みワニの頭に近寄った。
ゾーイ
「クッソがあああああ!!」
大剣はファイアーアリゲーターの首に入り血と共に飛んだ。
レイ
「はぁ....はぁ....」
ゾーイ
「おい、レイ。Eランクの任務でも結構疲れるな....はぁ....」
レイ
「だな....」
クロエ
「みんなー!ワニって耳あるのー?」
メル
「....確かに....どする?」
ゾーイ
「首落としたんだし首ごと持ってくしかないだろ。」
レイ
「次はキノコだな。」
メル
「火を吐くキノコだったらただじゃおかないわよ。」
レイ
「んなことねーだろ。」
3人は川から上がりクロエの元に登った。
クロエ
「ねぇ.....地面から火が吹いてる。」
レイ
「はぁ?!んなわけねぇだろ....なんだあれ。」
ゾーイ
「キノコから火が吹いてんぞ......」
メル
「びしょびしょで気持ち悪かったところよ。ちょうどいいわ。ゾーイ。レイ。乾かしに行くわよ。」
メルはヤケになって魔法を使わず杖を振り回し火を吹くキノコを叩き潰した。
レイ
「おーい。潰すなら綺麗に潰せよー!持って帰れねえだろー!行くか。」
ゾーイ、メル、レイは服を乾かしながらバッサバッサキノコを狩った。
クロエは帽子の中に川の水を入れて火を消しながら手でもぎ取った。
クロエ
「大きくて赤くて美味しそう。。ルナ?食べれるかな?」
ルナはキノコの匂いを嗅いで鼻を前足で押さえもがいた。
クロエ
「やめといたほうがいいね。」
レイ
「こんなもんでいいだろー。」
ゾーイ
「もう火一つ吹いてないし服も乾いた。袋に詰めるか。」
メル
「ちょっとー!2人ともきてー!」
レイ
「ん?」
ゾーイ
「これ、キール村でよくなるヘミダケじゃねえか!」
レイ
「ちょうど3つあるな。クロエに内緒で食っちまおうぜ。」
メル
「えー、でも....」
ゾーイ
「いいじゃねえか。食っちまったら分からねーよ。」
キール村では小川によくヘミダケがよくなり生でも食せる甘くて美味しいキノコでおやつによく並んだ。
クロエ
「皆どこ行っちゃったんだろう。」
袋には赤いキノコがパンパンに詰めてあって側にはレイとゾーイとメルが横たわって泡を吹いていた。
クロエ
「ちょっと!何があったの?!」
ルナは側に転がっていたヘミダケを嗅いだ。またさっきのように前足で押さえもがいた。
クロエ
「ヘミダケ?でもルナが嫌がってるから違うの?私に内緒で.....とりあえずなんとかしなきゃ!!」
クロエは少し苛立ちながらもそれよりこの横たわった3人をなんとかしないとという気持ちの方が大きかった。
クロエ
「どしよ....重力魔法でも流石に3人持つのは無理....助けを呼ぼう。」
クロエは近くにいる冒険者を探した。
クロエ
(早くしないと命に関わりそうな気がする。早く!早く!!」
クロエは自分に加速魔法をかけて全速力で探した。
クロエ
「!!」
空まで煙を上げ魚の匂いがする。
どうやら誰かが焚火で魚を焼いていることに気づきそこまで走った。
「ぎゃはははははは!」
4人の笑い声が聞こえた。
クロエ
「あそこだ。」
クロエ
「す....すみません!!はぁ....はぁ....」
4人はクロエより少し年上のように見えた。1人パーティリーダーだと思われる顎に髭の生えた青年の人間族は声をかけた。
「お嬢ちゃんどした?」
クロエ
「仲間が....仲間が変なキノコ食べて倒れたんです!!」
「多分ナイトマッシュルームですね。」
褐色の肌のハーフエルフの女性がそう言った。
「とりあえず案内しろ。」
クロエは4人に加速魔法をかけ横たわった3人まで案内した。
「か....加速魔法....め....珍しい....ですね....」
内気で身長も小さな人間族の女性がそう言った。
クロエ
「あそこです!」
「あーやっぱナイトマッシュルームですね。食べたらすぐ死ぬわけじゃありませんが解毒が必要ですね。確か...余っていたような...」
ハーフエルフの鞄から紫色の液体を取り出し3人は少しずつ呑んだ。
「意識はあるようですね。これで大丈夫です。とりあえずゴレアリアに連れて....」
「だりぃなあ〜」
そう言ったのは髪が長めで片目が隠れ黄緑色の珍しい髪色をした人間族の青年だった。
クロエ
「今日2つEランクの任務の半分の報酬あげますので運ぶの手伝ってくれませんか....」
「今日俺らに1杯ずつ奢ってくれよ!」
そう言って内気な女の子以外は1人ずつ背負った。クロエはゾーイ、レイ、メルそして任務鞄に重力魔法をかけた。
「うおっ軽っ!!行くぞ!」
ゴレアリア大国に着きハーフエルフは
「病院は大丈夫だと思います!とりあえず宿まで行って寝かせて安静にしましょう。」
そう言ってクロエは宿のハニー・シーまで行った。
ゼフ
「おー!クロエ!今日は早ぇじゃねえか...ってどしたこいつら!」
クロエ
「変なキノコ食べたみたい。」
ゼフ
「おーい!ゼラ!」
ゼラ
「どしたんだい!とりあえず部屋まで!!」
男部屋にベッドを一つ持っていきメル、レイ、ゾーイを寝かせた。
ゼラ
「今はまだ熱がひかないから安静にしないとね。」
クロエ
「本当にありがとうございます。本当にありがとう。」
「礼はいいから酒奢れよ!んじゃとりあえず後でメインストリートの冒険者ギルド集合な。」
そう言って4人は宿から出た。
ゼフ
「なんだ?友達か?」
クロエ
「この3人を担いでここまで運んできてくれたの。」
ゼラ
「雰囲気あなたたちに似てるわね。」
そう言ってゼラは3人の額に濡れたタオルを置いた。
ゼラ
「ナイトマッシュルームだね。この症状。よく冒険者が間違えて食べて死ぬってのはよく聞く話だよ。あははは。」
クロエ
「はぁ。。」
ゼフ
「クロエに内緒で食ったのがバチが当たったんだろ。」
ゼラ
「今日は目を覚まさないだろうね。地獄は明日だよ。腹痛とめまいと吐き気と...まあ明日、明後日はろくに動けないだろうさ。」
ゼラ
「さっきの子たちにお礼行っときな?あとは任せて。」
クロエ
「そうだった!!ゼラさんありがとう!」
クロエの後を追うようにルナも走り出した。
ナーシャ
「今日の報酬ね。.....あれ?他の3人は?」
クロエ
「食あたりで.....」
ナーシャ
「へぇ。クロエちゃんは鋼の胃袋持ってるのね!」
クロエ
「いや....そういうわけじゃ....」
「おーいたいた!」
クロエ
「あ、さっきはありがとうございます。ほんと助かりました。」
ファリア
「そんなかしこまらんでいいって!俺、ファリアな。よろしく。」
ファリアは奇策で自信たっぷりでなんでもポジティブに考える青年だった。背中には大きな斧を背負っていた。
ナージャ
「わ....私は...ナージャ...さっきのあなたの...魔法...すごいと...おもう....」
ナージャは内気で恥ずかしがり屋でいつもみんなの後ろに隠れる女の子。魔術師で長い杖の先端に赤い球が埋め込まれていた。恐らく火属性だろう。
レイナ
「私はレイナです。薬士でありながら冒険をしています。」
珍しい非戦闘系で医療係。珍しい薬草を見つけては調合をしているという。ハーフエルフ族。
ムゼイア
「ふぁ〜。僕はムゼイア。ただのムゼイアだぁ。ふぁ〜。」
大きなあくびをしながら眠たそうにそう言ったのはいつもめんどくさがり屋だが戦闘になると一番に敵を仕留める弓の名人らしい。
クロエ
「私はクロエ。バッファーとして魔術師をしてます。」
レイナ
「敬語はやめましょう。恐らく私たち同期ですよ。」
クロエ
(レイナさんに言われても.....)
「じゃ....じゃあ....よろしくね!」
ファリア
「おう。」
クロエ
「待ってて!さっきの報酬の....」
ファリア
「あー。いーのいーの。報酬はいらねえよ。それよりさ、それよりさ!1杯奢ってくれよ。」
クロエ
「えー報酬は?!」
レイナ
「話し合った結果そうなったんですよ。ほら、行きましょう。」
クロエは4人に押され冒険者ギルドを出た。
クロエ
「さっき同期って....」
ファリア
「俺らもEランクとかCランクばっかの任務だ。ほらこれが証拠。」
4人ブロンズの指輪をしていた。
ファリア
「つい先週冒険者なったばかりの駆け出しってやつさ。」
クロエ
「私たち昨日が初任務で2日前にこの国に来たばかり。」
レイナ
「それにしても先ほどのバフは凄かったですよ。他に強化魔法をお持ちですか?」
クロエ
「強化魔法は...みんなできるでしょう?」
ナージャ
「い....いえ、皆...破壊魔法を....」
ムゼイア
「そーゆーこーと。皆破壊魔法の方ばかり極めてるのが普通。足疲れたよー。」
レイナ
「あと少しですよ。ムゼイアさん。魔術師は皆破壊魔法に偏り強化魔法は誰もしないんですよ。だって、雷や炎をバーンッてするの気持ちいんじゃないですか?」
クロエ
(なんかメルもそんなこと言ってたっけ....)
ファリア
「着いた!踊る貝!」
昨日4人で行った『踊るキリ貝』だった。
ナージャ
「わっ!あの人....また...」
アリ姉
「おら!とっとと帰んな!」
ドアーフ族をいとも簡単に投げ飛ばしていた。
ファリア
「おーい!女将さん!」
アリ姉
「あんた誰だい?」
クロエ
(やっぱり人の顔と名前覚えないんだね...)
ムゼイア
「ここ5日連続して来てるのにね。とりあえず座ろうよ。」
アリ姉
「悪いね。うちは名前も顔も覚えれないんだよ!だはははは。おや、クロエじゃないかい?」
クロエ
「やあ、アリ姉。」
アリ姉
「こんな昼間から呑むのかい?若いのに強いんだねぇ。」
クロエ
「アリ姉も一緒にどう?」
アリ姉
「ちょうど最後の客を帰らしたとこだよ。ほら、入んな。」
ファリア
「エール4つ!それと....」
アリ姉はクロエを見て、
アリ姉
「バテルだね。分かってるよ。それとうちも一本もらうよ。」
ファリア
「ぷぁはああー!うんめぇ!」
アリ姉
「そういえばクロエ、あんなのパーティってそんな頭の悪そうな子たち引き連れてたかい?」
クロエ
「頭が悪いのはうちのパーティだよ。拾ったキノコ食べてお腹壊したの。」
ムゼイア ファリア ナージャ レイナ
(言えてる....)
アリ姉
「だははははははは。そうかいそうかい。で、こいつらに助けてもらったってわけかい。」
クロエ
「そゆこと!でも驚いた。昨日来た酒場だもん。」
ファリア
「この国にいくらでも呑むとこはあるがまさか行きつけのとこが一緒なんてな。」
ナージャ
「行きつけでも....名前は覚えて...くれてな...」
レイナ
「エールおかわりお願いします。んで、クロエさん。あの調子じゃ3人とも2日はろくに動けないと思います。どうでしょう、2日間だけうちのパーティに入り任務を一緒にしませんか?」
クロエ
「あ....あの....」
アリ姉
「いいんじゃない?クロエ。どうせ暇なんだろう。裏切って別のパーティに入るわけじゃないんだし。」
クロエ
「そうじゃないんだけど...いや、ごめんなさい!やっぱり無理です!」
ファリア
「振られたかー。まあ、しょうがねーな。」
クロエ
「そうじゃないの....暇だから別のパーティで任務をするってのは....やっぱ....違うというか、4人で頑張ろうって決めたから...その...」
クロエは涙目になりアリ姉はそれに気づきフォローをする形で喋った。
アリ姉
「まっクロエがそう言うなら諦めな。無理言っても多分めげない子だよ。この子。同期だろ?お前たち。呑み仲間として最初は仲良くやんな。」
クロエ
「ご、ごめんなさい!!」
ナージャ
「あ.....あやまらなくて....も....大丈夫だ....よ....」
ムゼイア
「まあ誘うのを目的にここ呼んだけど断られちゃしょーがないねー。」
レイナ
「友達から始めましょう。」
ファリア
「だな。強化魔法なんてかけられたことなかったからうちに欲しい!って思っただけだ!」
レイナ
「やっぱ引き込もうとしてたんじゃないですか。」
そこから村のこと、メルーン王国のことファリアたちの故郷のことを話し合い呑んで食べて最終的に大騒ぎして楽しんだ。
アリ姉
「またきなよー。」
クロエ
「ありがとう!アリ姉!また来るよ!」
ファリア
「ぎゃはははははは!女将さんまたなー!」
ナージャ
「ちょっとぉ...飲み過ぎちゃいましたぁ〜」
クロエはムゼイアの肩を持ちヨタヨタ歩いた。
クロエ
「ちょっとぉームゼイアさん。しっかりして!」
ふにっ
クロエ
「ん?」
何か当たったような....胸?
ムゼイアさんの胸をもう一度触ってみる。
ふにっふにっ
クロエ
「えええ?!ムゼイアさんって女の子なのー?!」
ファリア
「なんやお前、知らんかったんか。ムゼイアは女だぞー。」
ムゼイア
「そーだぞー。女の子だぞー。そんな触るなー。」
クロエ
「ん、ま、まあいいや。宿ってどこー?」
ファリア
「着いた。近いだろ?お前らの宿よりはいいとこだぜー。」
クロエ
「近いって言っても私たちの宿の目の前じゃん!窓開けたら見える!」
クロエの宿の目の前だった。
ナージャ
「今日はありがとう〜!!」
クロエ
(この子お酒呑んだ方が普通に話してくれるんじゃない?)
ファリア
「今日はサンキューなー!ちなみにこいつらは女だけど俺は男だぞー!」
クロエ
「それは知ってるよ!」
ファリア
「何かあったら何でも言えよ!あいつら回復したらよろしく言っといてくれー!」
クロエは大きく手を振り宿に戻った。
クロエ
「ゼラさん。3人の調子はどーお?」
ゼラ
「今日は目を覚まさないわ。ほら、お風呂入ってきなさい、」
クロエ
「見てくれてありがとうございます。」
ゼラ
「なあに言ってんのよ。ほら、お風呂!お風呂!」
クロエ
(なんかママみたいで落ち着くな...)
お風呂も入り女子部屋に入った。
クロエ
(そうだった。メルは男子部屋に隔離させたんだった。)
窓の側の椅子に腰を下ろした。
メルと昨日一緒に呑んでいたバテルが1瓶半分くらいの量が机に置かれていた。
瓶のまま口をつけた。
クロエ
「いつからこんなに呑むようになったんだろ....3日前じゃん!)
クロエは飲みながら手紙を書いた。