BATEL
第19章 黒海団
丸い月が出た夜。
(またあの夢.....)
焼かれた森が火花を散らしてパチパチと音を立て何本もの木が焦がれて倒れていく。
火は紅くとも黒い炎が辺りを燃やし尽くす。
何百もの家は火で真っ黒になり原型を留めずに灰になる。
子も女も首を斬られそこら中に散らばる血、鼻につくような死体が焼けた臭い。
(いつも優しくしてくれた屋台のおじさんやおばさん。行きつけのお店の店員さん、村人たち.....どうしてこんな酷いこと......)
この風景には見覚えがある。
キール村だった。
1人たたずむ女性。
すごく背が高く、スラッとしていて力強く胸を張りただどこか悲しげにも思える。
黒ずくめでフードを被ってて顔が見えない。
赤く長い髪が熱風で揺らめきギラギラとした目でこちらを見ている。
両目が赤く光り、そして涙を流している。
クロエ
「あなたがやったの?」
???
「...............」
クロエ
「どうしていつも答えてくれないの?」
???
「.....タ......ケ.....テ......」
クロエ
「え?」
???
「........タスケテ.....」
クロエ
「助ける!助けるから!!ここから逃げよう!!」
クロエは謎の女性の手を掴もうとしたが掴めなかった。
クロエ
「あれ....掴めない。」
???
「.........ニゲテ.....」
クロエ
「え?」
クロエの頭が吹き飛び地面に転がった。
クロエ
「あああああああああああああああ!!」
メル
「ど、どした?!クロエ!!」
いつもの宿の女部屋でメルが慌ててクロエに近づいた。
メル
「クロエ?」
クロエ
「メル.....大丈夫だよ.....」
メル
「ほんと?顔が白いよ?」
クロエ
「はぁ....はぁ....」
メル
「外行く?」
クロエ
「はぁ.....うん.....」
外は朝方で少し冷えた。
外のベンチに座った。
メル
「大丈夫?」
クロエ
「うん。ありがと。私元々肌白いよ?」
メル
「馬鹿なことを言えるならもう落ち着いてきたって証拠ね!悪い夢でも見たの?」
クロエ
「小さな頃から同じ夢を見るんだ。キール村が燃えて村人皆死ぬんだ。で、いつも背が高く綺麗な女性が立ってるの。」
メル
「うん。」
クロエ
「私と同じ赤い髪と赤い目をしてた。でもその女性はもっとずっと大人だった。」
メル
「大人になったクロエかな?」
クロエ
「わからない。でもその女性にいつも殺されて夢から覚めるんだ。」
メル
「なんで殺されるの?」
クロエ
「わからない.....決まって首を切られて頭が地面に落ちる瞬間に目が覚める。」
メル
「ただの夢だよ!気にしないことにしよ?ね!」
クロエ
「う、うん。」
メル
「てかあれだけクロエが叫んでたのに男共は起きんかねー普通。」
クロエ
「ごめん。」
メル
「謝らない!そろそろ支度しよっか!」
クロエはドリスが仕立てる防具屋に任務が終わる度にドリスに提供した。
防具が出来るまで4日もかからなかった。
カランッ
宿のドアが開いた。
ファリア
「ういーす!」
レイ
「なんだ。ファリアか。」
ファリア
「なんだとはなんだ!!」
ゼフ
「揃いも揃って大勢来たのぉ。」
ペイン
「なんだこのべっぴん揃いのパーティはぁ!!」
メル
「仲良くしてるパーティだよ!」
レイナ
「この人が上位冒険者ってことですか。」
メル
「変わったおじさんだけどね。」
ムゼイア
「くろちんおはよお〜。」
ムゼイアは相変わらずクロエに抱きついた。
ムゼイア
「くろちんの装備かあいいねぇ〜。」
クロエの装備は全身黒のレザーだった。
ドリスにお願いをし肌をあまり出さないように作ってもらい薄い黒のタイツにショートパンツ、革製のベストだった。靴はヒールを無くしたショートブーツだった。
セイン
「はじめまして。私セインと申します。」
クロエ
「聞いています。ファリアのお兄さんですね!」
ファリアとは正反対の性格だった。
ゾーイ
「んで、何のようだ?」
ナージャ
「あ.....あの.....勝手なんですが.....」
ペイン
「ん?」
ファリア
「黒海団のアジト調査任務があってよ!取って来たんだけどよー2パーティが任務条件だったんだ。」
ゾーイ
「その2パーティ目を探そうとしここに来たのか。その黒海団の調査任務ってランクどのくらいだ?」
セイン
「Bですね。しかもBの中ではかなり上。」
レイ
「ペイン先生よー。大丈夫かぁ?」
ペイン
「なんだ?お前らの事だから聞かずにやるぜ!!とか言うと思ったけど違うんだねぇ。」
メル
「Bランクってどのくらいした?」
クロエ
「数えれるくらいかな?」
ペイン
「大丈夫じゃないのー?」
レイ
「黒海団ってアジトあるんだな。任務の張り紙あるか?」
レイナ
「はい。」
ロビーの机に置き2パーティ10人で囲んで眺めた。
メル
「これ、冒険者だけじゃないみたいね。」
レイナ
「そうなんです。そのアジトはこの国を出て
隣のハザール大国の境目の砦だそうです。なのでハザール兵、ゴレアリア兵もいるみたいなんです。」
クロエ
「そんなに兵がいるのにどうして調査?」
ペイン
「Bランク上位か。恐らく戦闘に加わり国兵の援護をしつつ殲滅後、砦の調査ってわけだな。ということは駆り出された国兵もかなり大きな戦闘になると思ったんだろ。」
セイン
「ですね。つまり2パーティ組んで更にその中で兵の援護役、砦の調査役と二手に分かれた方がいいですね。調査の方は隠密戦闘になると思うのでなるべく人数は少ない方がいいでしょう。」
ペイン
「だな。よし、この任務は受けた。お前らのクラスを教えてくれ。今のうちに二手に分かれるメンバーを決めよう。」
ファリア
「戦士。大斧使いだ。」
レイ
「剣士。二刀流のな。」
ゾーイ
「剣士。大剣。」
ナージャ
「元....魔法使いの....弓術使いです....」
レイナ
「非戦闘です。」
ムゼイア
「弓術使い。静かに仕留めれます。」
メル
「メルも弓術使い。静かに仕留めることなんてできるのー?!」
ムゼイア
「できるよ〜。」
クロエ
「アサシン。短剣使い。」
セイン
「私は剣と盾なので兵の援護を。」
ペイン
「これで全員だな。兵の援護はセインをリーダーにレイ、ゾーイ、ファリアを軸に戦いメルとナージャは遠くから援護をしろ。レイナは医療兵の手伝いを。砦の調査は俺、クロエ、ムゼイアで行く。」
ルナ
「んにゃぁ〜!!!!」
ペイン
「分かってるよ。君もクロエと行くんだ。」
セイン
(さすが元メルーン王国一の指揮官だけありますね。ここまで素早く指示を出すとは。)
ファリア
「んじゃ任務承諾に行ってくるからレイもついて来い!」
レイ
「おう。」
2人は冒険者ギルドまで走った。
ペイン
「今日帰れるか分からないから準備は厚めにしといてちょーだいよ。」
ムゼイア
「やった〜。くろちんと一緒だね!」
クロエ
「そうだね!」
ペイン
「砦の中はどこまで暗いか分からないから蝋燭持準備しときなよ。」
ファリア
「うっしゃあああ!行くかあああ!」
ナージャ
「あ....あの.....少し...うるさいです。」
初めて森を抜け緩やかな山道に出た。
セイン
「地図を見るとこの山を超えて谷が見えたらもう近くみたいですね。」
道には沢山の兵の足跡が残され土は柔らかく歩きにくかった。
クロエ
「ペイン先生。黒海団は少数で動く組織じゃなかった?」
ペイン
「兵隊を集めて良からぬことをしているな。何かは分からないけど。2つの国の兵を集めて戦っているからかなりの数がいるだろう。気を抜くなよ。」
セイン
「見えました。」
山の山頂にたどり着き、高い砦が見えた。
砦からは顔を覆って目のみ開けたマスクの赤い衣装を纏った敵兵が弓を持ち矢を雨の如く降らせ国兵はてこずっていた。
砦以外は地につき剣を交えた音が無数にも響いた。
医療テントに向かった。
ペイン
「冒険者です。援護にきました。」
医療兵
「おお。冒険者様ですか。あちらに馬に乗ったのがゴレアリア軍の隊長殿です。」
ペイン
「ありがとう。お前らは少し待ってて。」
ペイン
「ゴレアリアから来た冒険者です。」
ナパームストロング
「おお!やっと来たか!俺はゴレアリア兵ナパームストロング隊長だ。見ての通りてこずっている。」
ペイン
「いつのまに黒海団はこんな兵を集めたのでしょう。」
ナパームストロング
「さあな。敵兵を蹴散らし砦に迎え。」
ペイン
「2パーティに分かれ行動します。入り口は?」
ナパームストロング
「あの裏だ。小さな扉を見つけた。調査人数は?」
ペイン
「3人です。」
そう言った瞬間砦の方から矢が飛んで4、5人の兵士に突き刺さり倒れた。
ペイン
「いや、やっぱ2人で。」
ナパームストロング
「わかった。心してかかれ。」
ペイン
「悪い。ちょっと俺とクロエだけで砦に向かうことにした。」
セイン
「どうかしました?」
ペイン
「いやーここまで荒れてるとは思わなかったからねぇ〜。ははは。」
セイン
「分かりました。」
ペイン
「んじゃあセインさん、後は頼みます。ゾーイ、レイ、メル。初めての対人戦だ。相手は魔物じゃない。お前らと同じ人間や亜人だ。だが躊躇うな。敵は躊躇なく殺しにかかってくる。わかったな?」
レイ ゾーイ メル
「わかった。」
ペイン
「お前ら気を付けろよ。じゃ!クロエ行くぞ。」
クロエはペインに続き砦から離れ川から裏口まで行くことにした。
セイン
「んじゃ、作戦を説明します。ちゃんと聞かないと死ぬことになりますからね!」
セイン
「メル、ナージャ、ムゼイア。あなたたちは身を隠れ砦から矢を撃ってくる敵を一人ずつ倒してください。戦争も経験したことのないのは分かりますがこう言った戦には冒険者は駆られることもあります。3人なら大丈夫ですよ!レイ、ゾーイ、ファリアあなたたちは.....頑張ってください。」
レイ
「俺ら適当だなーおい。」
メル
「性格的に大丈夫なんでしょ。」
セイン
「それからレイナは医療班の指示に従いお手伝いを。」
ファリア
「兄さんは?」
セイン
「僕は貴方たち3人の護衛ですよ。それじゃ、いきましょう!」
レイ、ゾーイ、ファリア、セインは走り出した。
レイは素早い2本の剣術で手足を切断しゾーイは相変わらずの怪力で大剣を振り回した。
ファリアも長い斧で敵の甲冑ごと叩き割った。
セインは盾で防御し剣で戦った。
セイン
「攻撃だけじゃスキが出てきますよ!」
レイ
「わかってるよ!!」
レイは両手剣をクロスさせ敵の剣をガードしそのまま勢いよく前方に押し出しよろめいたスキに首をはねた。
遠くから見た女性陣3人は
メル
「うげ〜。あんな簡単に人間を殺せるのが不思議だわ。」
ナージャ
「メ.....メルさん。私たちも.....」
ムゼイア
「だね〜。」
3人は身を屈め敵が居ない方向に向かった。
ムゼイア
「この辺でいいかもー。」
ちょうど死角になる木々に隠れた。
ムゼイア
「んじゃあ撃ってみよう〜。」
ググッ.....
弓の弦を思いっきり引き放った。
砦から身を取り出す敵の首に命中し落ちた。
ナージャ
「す....すごいです!」
メル
「メルも参戦!」
ググッ......
ナージャ
「ちょ.....あれ......」
ナージャは指を指した。
メルとムゼイアはその方向を見た。
砦の正門から大きな図体が2体現れた。
兵
「オークだあああああ!!!」
兵
「オークが出たぞー!!!!」
メル
「オークって.....あのオーク?!」
レイ
「おい!!」
ゾーイ
「なんだこの足音.....」
セイン
「みんな!!伏せて!!」
セインの呼びかけで4人は伏せた。
その頭上をかすめたのは敵兵の死体だった。
ファリア
「おいおいマジかよ....オークじゃねぇか。」
ゾーイ
「死体を投げてきたのか....」
レイ
「なんで人間とオークが.....」
セイン
「敵兵が投げてきました。オーク自身も敵味方わかってないようですね。上位クラスの冒険者2、3人でやっと倒せる敵です貴方たちじゃ手に負えません。一旦引きましょう。」
クロエとペインは川から身を乗り出し裏口の見回りをしている敵兵に見つからず身を潜めた。
ペイン
「お前、血は大丈夫か?」
クロエ
「どうゆうこと?」
ペイン
「短剣使いは敵の血を浴びながら戦う。汚れても目立たない服で良かったな。袖はまくっておくよーにな。」
クロエ
「う、うん。これからどうするの?」
ペイン
「俺は何の武器を使うと思う?」
クロエはペインの身体を見た。
クロエ
「さあ?」
ペイン
「お前と一緒だよ。対人戦での短剣の戦い方を教えてやる。まあ見ておけよ。」
ペインは敵兵が後ろを見たスキに腰を下ろし静かに近寄った。
どこからともなく短剣を取り出し逆手に持って一気に首を切った。
敵兵
「カッ......ク.....カッ........」
ペイン
「どうだー?」
クロエ
「......すごいね!」
ペイン
「血は大丈夫そうだな。見てただろ?静かに後ろから近寄り一気に首を切る。以上。足音を立てずに素早く暗殺だ。」
クロエ
「わかった。」
2人は裏口のドアを開けた。
ドアを開けると蜘蛛の巣が壁に張り付き埃まみれで真っ暗な内部。
ペイン
「ここからは小声だ。わかったな。」
クロエはコクコクっと首を縦に振った。
「おい!みろよ!!」
「ああ。オークが出てきて皆逃げてやがる。」
「ギャハハハハハハ。だろうなあ!」
砦の小窓から弓兵2人
ペイン
「とりあえず2人....だな。俺について来い。」
クロエはペインと同じ体勢になりペインは弓兵の一人に指で合図をし一人ずつ背後に近づいた。
ズバッ
ペイン
「上出来だ。思ったより狭い砦だ。アサシンには持って来いの場所だな。で、、、」
クロエ
「ん?」
ペイン
「この視界の悪い暗い場所でなんで見えるんだ?」
クロエ
「あー。なんでだろう。」
ペイン
「そういえばヴァンパイア族の血が流れてるんだな。」
クロエ
「ヴァンパイア族は暗い場所がみえるの?」
ペイン
「そうゆうことだな。蝋燭の節約にいいだろ?はは。」
クロエ
「だね。」
クロエは笑った。
ペイン
「んじゃ上に行くか。」
螺旋階段になった石階段を足音立てず次の階に進んだ。
まずペインが覗き込んだ。
ペイン
「.....3人だ。」
クロエ
「この場合どうするの?」
ペイン
「そーだなぁー。」
ペインはそう呟きながら下の階に降りた。
クロエ
「下?!」
ペイン
「まあついて来い。」
ペインはクロエに身を潜めるよう言い机の上に置いてあった壺を落とした。
パリンッ!!
「おい!下から何か聞こえなかったか?」
「様子を見て来い。」
ペイン
「ほらな。」
クロエ
「なるほど。」
ペイン
「あと、耳もすませ。足音で何人来ているか把握するんだ。これは....一人だな。」
コツッ.....コツッ.....コツ.....
ペイン
「女だ。」
クロエ
「なんでわかるの?」
ペイン
「歩き方にクセがあるんだ。」
コツッ....コツ.....
足音がだんだん大きくなりクロエ達がいる階に着いた。
それと同時に後ろからクロエは左手で口を押さえ右手の短剣で首を切った。
クロエ
「痛っ!!!」
ペイン
「大丈夫か?」
クロエ
「噛まれた.....」
ペイン
「首を切るとき人間ってのは噛みちぎるくらい力強く噛み締めるんだ。左手は手袋した方がいいぞー。それと左手は口より額をクイッと上に持ち上げる感じかなー。首が出るだろ。声を出す前に素早く切れ。」
クロエ
「早く言ってよ〜。」
クロエはそう言いながら噛まれた手にポーションをかけた。
ペイン
「それと.....切った敵は優しく地面に置けよ。」
クロエ
「わかった。」
レイ
「やべぇ!このデカブツ足が早ぇえ!」
ドドドドドドッ!!!
物凄い勢いでオークは雄叫びを上げながら突進してきた。
遠くから見たメルはすかさず矢を放った。
メル
「みんな逃げて〜!」
ムゼイア
「オークに矢は効かないよ!」
メル
「足止めができればそれでいい!!」
スパッ!スパっ!!
矢は勢いよく2本オークの足に突き刺さった。
オークはよろめいた。
ナージャ
「効いてる......?」
ムゼイア
「足かあー!」
メル
「マグレで足に当たった......」
ムゼイア
「いいよぉー。3人でオークの足を狙おう!」
ナージャ
「は....はいぃ。」
シュパパパパパッッッッ!!!
3人は勢いよくオークの下半身を狙い撃ちした。
ゾーイ
「おい。」
ファリア
「はぁ....はぁ....んだよ!!」
全速力で走る4人は振り返った。
セイン
「メルさん達がオークの下半身狙ってますね。動きも鈍くなってます。」
レイ
「俺らで倒せねーか?」
セイン
「.....やってみますか。私が先頭で攻撃を受けます。怯んだスキに攻撃して下さい。」
セインは遠くのメル達に合図をした。
ナージャ
「メルさん....ムゼイアさん....あれ....」
メル
「攻撃をやめろってこと?」
ムゼイア
「だねぇ。」
ナージャ
「私...たちは砦を....」
セイン
「お、攻撃止みましたね。んじゃ、」
セインは盾を構え逃げた方向とは逆にオークに突進した。
ガンッ!!!!
オークの大きな拳と盾がぶつかり鈍い音を奏でた。
ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!
セイン
「さすがオーク。すごい力だ。でも....」
拳が盾にぶつかる瞬間セインはかわした。
ゾーイ
「よろめくぞ。俺は右からお前らは左から頼む。」
オークは力任せに殴った拳は空振りになり前方向によろめいた。
セイン
「今です!!首を狙って下さい!!」
左からファリアの大斧、レイの双剣。
右からゾーイの大剣、セインの剣。
4人は大きく振りかざし首を狙った。
オークの首は飛んだ。
4人で首を狙いやっと仕留めたオークは膝から落ち地面に転がった。
ファリア
「はぁ......オークやったぞ!!」
ゾーイ
「ああ.....。」
セイン
「休む暇はないですよ!あと1匹オークいますからね!しかも次のオークは......」
もう一人のオークは倒したほぼ裸のオークとは少し違った。
ボロボロのローブを纏い首には人間の骸骨で作ったネックレスを首にかけていた。そして片手には大きな杖。
そのオークは杖を振りかざし呪文も唱えた。
兵士達の頭上の空から赤い魔法陣が現れそこから火柱が数十の兵が焼かれた。
ムゼイア
「あれ......」
遠くに離れて矢を撃っていた3人でもとてつもなく大きな火柱の燃え盛る光が3人の顔を照らした。
ナージャ
「なに.....あの.....魔法....」
メル
「破壊....魔法...」
レイ
「おいおいあいつやばくねーか?!」
もちろんレイ達4人の顔にも火柱の光が顔に映った。
セイン
「オークマジシャン....」
ファリア
「オークマジシャンってなんだ?」
セイン
「本来オークは知能が低く武器は拳や木で戦う巨大生物なんですがあのオークマジシャンはごく稀に突然変異で魔力を宿し魔法を使える身体を身につき産まれる。」
ゾーイ
「魔法を使う相手はちょっとしんどいな。」
セイン
「もちろん僕の盾でも魔法は防げません。」
レイ
「じゃあどうすんだよ!!」
セイン
「あの杖を何とかすれば.....」
ファリア
「杖っつったって...自分の身体の一部のように振り回してるあれをか?!正気か?!」
セイン
「一旦退却しましょう!!」
4人は一斉にオークマジシャンとは逆方向に全速力した。
ペイン
「結構上まで来たな。」
クロエ
「うん。もう少しで最上階に着く頃じゃないかな。」
2人は螺旋階段を上り明らか別の階とは比べものにならないくらい豪華な階に着いた。
壁には松明が飾られ横の机には知らない国旗のマークが書いてある手紙が置かれていた。
ペイン
「このマーク....」
クロエ
「知ってるの?」
ペイン
「まさかな.....」
奥には玉座が1席。
ただ一人座っていた。
赤のローブを身に纏い全身赤い甲冑で松明の光が反射していた。
????
「ようこそ。黒海団のアジトへ。」
ペイン
「誰だ?」
????
「君たちがこの砦に入る時から存在は分かっていたよ。」
その男は立ち上がった。
ペインとクロエは自然と短剣を取り出し戦闘態勢に入った。
ただならぬオーラだった。
????
「よくここまで来たな。」
ペイン
「お前は何だ?」
????
「そうだな。黒海団の幹部ってところか。」
ペイン
「黒海団の目的はなんだ。何故こんなことを....」
????
「兵隊を集めている。そうでもしなきゃ世界の魔術師は殺せないからな。年々魔法を扱える奴は減っているとはいえまだ数は多い。」
ペイン
「何故魔術師を殺す....?」
????
「......」
ペイン
「答えろ。」
????
「人間族は魔法の扱いに一番乏しい種族。最初は魔法に憧れたが戦争を繰り返す度に魔法に恐怖を感じた。お前らも人間ならこの気持ち分かるだろう?まだ黒海団は小さな組織で3つの大陸にしか存在しない。だがいずれより拡大し全世界に拠点を置き魔術師を滅ぼす未来は近い。」
ペイン
「それがアトランティス王による命令か?」
????
「.....どうかな。」
ペイン
「クロエ。こいつはヤバそうだ。お前は手を出すな。」
????
「遅いよ。」
玉座の目の前に立っていたはずの男は消えて後ろにいるクロエの目の前で剣を鞘から抜き出していた。
ペイン
(早い!!)
クロエは早すぎて身動き取れず男の剣が首に切りかかろうとしていたのをかわすことも出来なかった。
瞬時にペインは短剣でその剣の動きを止めることができた。
ギギギギギ......
剣と短剣が交わり金属音が部屋に響いた。
????
「早いな。」
クロエは短剣で男の首を狙った。
謎の男はペインの短剣を振り払い下がった。
ペイン
「思ったより早いな。こいつ。本当に剣士かお前。」
????
「......さあな。」
謎の男は前に倒れる態勢になり走り出した。
ペイン
(来る!!)
ムゼイア
「砦は静かになったねぇ〜。」
ナージャ
「で...でも....あのオーク....」
メル
「ちょっとヤバそうだね。」
オークマジシャンは休む間もなく魔法を唱え火の破壊魔法を敵味方関係なく打ち続けた。
メル
「あいつ戦場荒らしてるだけじゃん。」
ムゼイア
「放っておいた方が敵も減りそうだねぇ〜。」
ナージャ
「で...でも...止めた方が....」
メル
「止めるったってあれをどうやって止めるの?!」
ムゼイア
「んー。」
ムゼイアはオークマジシャンの隙を探した。
ムゼイア
「あ!」
メル
「なに!」
ムゼイア
「あのオークマジシャン詠唱時間長くない?」
メル ナージャ
「それだ!!」
ムゼイアはオークマジシャンが詠唱を唱える間に矢を放つ事を思いついた。
メル
「んじゃあ3、2、1で打とう!」
ムゼイア
「ちょっと待って!」
ムゼイアは先端が尖っておらず代わりに穴の開いた鉄の鉄球が先端についた矢を取り出した。
ムゼイア
「僕が3、2、1って言うよ〜。」
ムゼイア
「3、2......」
ムゼイアは放った。
物凄い高音の鈴の音が辺りに鳴り響いた。
フューーーー!!!!!!!
ムゼイア
「1!!!!」
ムゼイアは瞬時に普通の矢を取り出した。
3人は一気に矢を放った。
スパッスパッスパッ!!!!!
オークマジシャンに3本の矢が突き刺さった。
セイン
「ん?この音......」
セイン、レイ、ゾーイ、ファリアは振り返った。他の兵士たちも振り返った。
レイ
「おい!あのオークに矢が!!」
セイン
(さすがです。メル、ナージャ、ムゼイア。)
「今です!!怯んでます!」
ファリア
「さすがムゼイア。行くぞ。」
ゾーイ
「結構走ったのにまた戻るのか....クソッ!!」
ナパームストロング
「弓兵よ。あのオークに矢を放て!!」
弓兵は矢の雨をオークに浴びせた。
ナパームストロング
「弓兵!剣に変えよ!残りの残党を殺せ!!!」
弓兵は弓を捨て剣を抜き雄叫びを上げながら突っ込んだ。
セイン
(助かります。隊長。)
セインを先頭に無数の矢が突き刺さったオークの腹を刺した。
続けてゾーイは胸を。ファリアは右腕を落としレイは両手剣でオークの首をはねた。
オーク2体は倒れ後は残り少ない敵となり優勢となった。
キンッ!
キンッ!
キンッ!
剣と短剣が火花を散らしながら攻防を繰り返していた。
????
「やるな。」
ペイン
(短剣じゃきついな。)
キンッ!!!!!
今までの音より大きな音をし短剣が吹き飛び地面に突き刺さった。
????
「短剣と剣じゃリーチが違いすぎる。負けを分かってて挑んできたのか?」
ペインの突き刺した剣はペインの肩を刺された。
クロエ
「ペイン先生!!」
ペイン
「く......」
ペインは倒れ謎の男は剣に付いた血を振り払った。
????
「短剣じゃ勝てねえよ。剣だったら勝てたかもな。まあもう無理だけど。」
そう言って剣を首元に優しく置いて振りかぶった。
クロエ
(やばい......やばい......ペイン先生が殺される!!!)
クロエは無意識に走り出していた。
視界が急に紫になり生命を持つ者は白く見えた。
????
「!!」
クロエは玉座の椅子の前で立ち尽くした。
長くて紅い髪はなびいた。
謎の男は首が飛び首からおびただしい血が吹きペインはその血を浴びた。
クロエはペインの方を向いた。
色素の紅い目は血のように真っ赤になり暗闇でその紅い目を
ペイン
「クロエ.....お前......」
クロエはその場に倒れ気を失った。
(またあの夢.....)
焼かれた森が火花を散らしてパチパチと音を立て何本もの木が焦がれて倒れていく。
火は紅くとも黒い炎が辺りを燃やし尽くす。
何百もの家は火で真っ黒になり原型を留めずに灰になる。
子も女も首を斬られそこら中に散らばる血、鼻につくような死体が焼けた臭い。
(いつも優しくしてくれた屋台のおじさんやおばさん。行きつけのお店の店員さん、村人たち.....どうしてこんな酷いこと......)
この風景には見覚えがある。
キール村だった。
1人たたずむ女性。
すごく背が高く、スラッとしていて力強く胸を張りただどこか悲しげにも思える。
黒ずくめでフードを被ってて顔が見えない。
赤く長い髪が熱風で揺らめきギラギラとした目でこちらを見ている。
両目が赤く光り、そして涙を流している。
クロエ
「あなたがやったの?」
???
「...............」
クロエ
「どうしていつも答えてくれないの?」
???
「.....タ......ケ.....テ......」
クロエ
「え?」
???
「........タスケテ.....」
クロエ
「助ける!助けるから!!ここから逃げよう!!」
クロエは謎の女性の手を掴もうとしたが掴めなかった。
クロエ
「あれ....掴めない。」
???
「.........ニゲテ.....」
クロエ
「え?」
クロエの頭が吹き飛び地面に転がった。
クロエ
「あああああああああああああああ!!」
メル
「ど、どした?!クロエ!!」
いつもの宿の女部屋でメルが慌ててクロエに近づいた。
メル
「クロエ?」
クロエ
「メル.....大丈夫だよ.....」
メル
「ほんと?顔が白いよ?」
クロエ
「はぁ....はぁ....」
メル
「外行く?」
クロエ
「はぁ.....うん.....」
外は朝方で少し冷えた。
外のベンチに座った。
メル
「大丈夫?」
クロエ
「うん。ありがと。私元々肌白いよ?」
メル
「馬鹿なことを言えるならもう落ち着いてきたって証拠ね!悪い夢でも見たの?」
クロエ
「小さな頃から同じ夢を見るんだ。キール村が燃えて村人皆死ぬんだ。で、いつも背が高く綺麗な女性が立ってるの。」
メル
「うん。」
クロエ
「私と同じ赤い髪と赤い目をしてた。でもその女性はもっとずっと大人だった。」
メル
「大人になったクロエかな?」
クロエ
「わからない。でもその女性にいつも殺されて夢から覚めるんだ。」
メル
「なんで殺されるの?」
クロエ
「わからない.....決まって首を切られて頭が地面に落ちる瞬間に目が覚める。」
メル
「ただの夢だよ!気にしないことにしよ?ね!」
クロエ
「う、うん。」
メル
「てかあれだけクロエが叫んでたのに男共は起きんかねー普通。」
クロエ
「ごめん。」
メル
「謝らない!そろそろ支度しよっか!」
クロエはドリスが仕立てる防具屋に任務が終わる度にドリスに提供した。
防具が出来るまで4日もかからなかった。
カランッ
宿のドアが開いた。
ファリア
「ういーす!」
レイ
「なんだ。ファリアか。」
ファリア
「なんだとはなんだ!!」
ゼフ
「揃いも揃って大勢来たのぉ。」
ペイン
「なんだこのべっぴん揃いのパーティはぁ!!」
メル
「仲良くしてるパーティだよ!」
レイナ
「この人が上位冒険者ってことですか。」
メル
「変わったおじさんだけどね。」
ムゼイア
「くろちんおはよお〜。」
ムゼイアは相変わらずクロエに抱きついた。
ムゼイア
「くろちんの装備かあいいねぇ〜。」
クロエの装備は全身黒のレザーだった。
ドリスにお願いをし肌をあまり出さないように作ってもらい薄い黒のタイツにショートパンツ、革製のベストだった。靴はヒールを無くしたショートブーツだった。
セイン
「はじめまして。私セインと申します。」
クロエ
「聞いています。ファリアのお兄さんですね!」
ファリアとは正反対の性格だった。
ゾーイ
「んで、何のようだ?」
ナージャ
「あ.....あの.....勝手なんですが.....」
ペイン
「ん?」
ファリア
「黒海団のアジト調査任務があってよ!取って来たんだけどよー2パーティが任務条件だったんだ。」
ゾーイ
「その2パーティ目を探そうとしここに来たのか。その黒海団の調査任務ってランクどのくらいだ?」
セイン
「Bですね。しかもBの中ではかなり上。」
レイ
「ペイン先生よー。大丈夫かぁ?」
ペイン
「なんだ?お前らの事だから聞かずにやるぜ!!とか言うと思ったけど違うんだねぇ。」
メル
「Bランクってどのくらいした?」
クロエ
「数えれるくらいかな?」
ペイン
「大丈夫じゃないのー?」
レイ
「黒海団ってアジトあるんだな。任務の張り紙あるか?」
レイナ
「はい。」
ロビーの机に置き2パーティ10人で囲んで眺めた。
メル
「これ、冒険者だけじゃないみたいね。」
レイナ
「そうなんです。そのアジトはこの国を出て
隣のハザール大国の境目の砦だそうです。なのでハザール兵、ゴレアリア兵もいるみたいなんです。」
クロエ
「そんなに兵がいるのにどうして調査?」
ペイン
「Bランク上位か。恐らく戦闘に加わり国兵の援護をしつつ殲滅後、砦の調査ってわけだな。ということは駆り出された国兵もかなり大きな戦闘になると思ったんだろ。」
セイン
「ですね。つまり2パーティ組んで更にその中で兵の援護役、砦の調査役と二手に分かれた方がいいですね。調査の方は隠密戦闘になると思うのでなるべく人数は少ない方がいいでしょう。」
ペイン
「だな。よし、この任務は受けた。お前らのクラスを教えてくれ。今のうちに二手に分かれるメンバーを決めよう。」
ファリア
「戦士。大斧使いだ。」
レイ
「剣士。二刀流のな。」
ゾーイ
「剣士。大剣。」
ナージャ
「元....魔法使いの....弓術使いです....」
レイナ
「非戦闘です。」
ムゼイア
「弓術使い。静かに仕留めれます。」
メル
「メルも弓術使い。静かに仕留めることなんてできるのー?!」
ムゼイア
「できるよ〜。」
クロエ
「アサシン。短剣使い。」
セイン
「私は剣と盾なので兵の援護を。」
ペイン
「これで全員だな。兵の援護はセインをリーダーにレイ、ゾーイ、ファリアを軸に戦いメルとナージャは遠くから援護をしろ。レイナは医療兵の手伝いを。砦の調査は俺、クロエ、ムゼイアで行く。」
ルナ
「んにゃぁ〜!!!!」
ペイン
「分かってるよ。君もクロエと行くんだ。」
セイン
(さすが元メルーン王国一の指揮官だけありますね。ここまで素早く指示を出すとは。)
ファリア
「んじゃ任務承諾に行ってくるからレイもついて来い!」
レイ
「おう。」
2人は冒険者ギルドまで走った。
ペイン
「今日帰れるか分からないから準備は厚めにしといてちょーだいよ。」
ムゼイア
「やった〜。くろちんと一緒だね!」
クロエ
「そうだね!」
ペイン
「砦の中はどこまで暗いか分からないから蝋燭持準備しときなよ。」
ファリア
「うっしゃあああ!行くかあああ!」
ナージャ
「あ....あの.....少し...うるさいです。」
初めて森を抜け緩やかな山道に出た。
セイン
「地図を見るとこの山を超えて谷が見えたらもう近くみたいですね。」
道には沢山の兵の足跡が残され土は柔らかく歩きにくかった。
クロエ
「ペイン先生。黒海団は少数で動く組織じゃなかった?」
ペイン
「兵隊を集めて良からぬことをしているな。何かは分からないけど。2つの国の兵を集めて戦っているからかなりの数がいるだろう。気を抜くなよ。」
セイン
「見えました。」
山の山頂にたどり着き、高い砦が見えた。
砦からは顔を覆って目のみ開けたマスクの赤い衣装を纏った敵兵が弓を持ち矢を雨の如く降らせ国兵はてこずっていた。
砦以外は地につき剣を交えた音が無数にも響いた。
医療テントに向かった。
ペイン
「冒険者です。援護にきました。」
医療兵
「おお。冒険者様ですか。あちらに馬に乗ったのがゴレアリア軍の隊長殿です。」
ペイン
「ありがとう。お前らは少し待ってて。」
ペイン
「ゴレアリアから来た冒険者です。」
ナパームストロング
「おお!やっと来たか!俺はゴレアリア兵ナパームストロング隊長だ。見ての通りてこずっている。」
ペイン
「いつのまに黒海団はこんな兵を集めたのでしょう。」
ナパームストロング
「さあな。敵兵を蹴散らし砦に迎え。」
ペイン
「2パーティに分かれ行動します。入り口は?」
ナパームストロング
「あの裏だ。小さな扉を見つけた。調査人数は?」
ペイン
「3人です。」
そう言った瞬間砦の方から矢が飛んで4、5人の兵士に突き刺さり倒れた。
ペイン
「いや、やっぱ2人で。」
ナパームストロング
「わかった。心してかかれ。」
ペイン
「悪い。ちょっと俺とクロエだけで砦に向かうことにした。」
セイン
「どうかしました?」
ペイン
「いやーここまで荒れてるとは思わなかったからねぇ〜。ははは。」
セイン
「分かりました。」
ペイン
「んじゃあセインさん、後は頼みます。ゾーイ、レイ、メル。初めての対人戦だ。相手は魔物じゃない。お前らと同じ人間や亜人だ。だが躊躇うな。敵は躊躇なく殺しにかかってくる。わかったな?」
レイ ゾーイ メル
「わかった。」
ペイン
「お前ら気を付けろよ。じゃ!クロエ行くぞ。」
クロエはペインに続き砦から離れ川から裏口まで行くことにした。
セイン
「んじゃ、作戦を説明します。ちゃんと聞かないと死ぬことになりますからね!」
セイン
「メル、ナージャ、ムゼイア。あなたたちは身を隠れ砦から矢を撃ってくる敵を一人ずつ倒してください。戦争も経験したことのないのは分かりますがこう言った戦には冒険者は駆られることもあります。3人なら大丈夫ですよ!レイ、ゾーイ、ファリアあなたたちは.....頑張ってください。」
レイ
「俺ら適当だなーおい。」
メル
「性格的に大丈夫なんでしょ。」
セイン
「それからレイナは医療班の指示に従いお手伝いを。」
ファリア
「兄さんは?」
セイン
「僕は貴方たち3人の護衛ですよ。それじゃ、いきましょう!」
レイ、ゾーイ、ファリア、セインは走り出した。
レイは素早い2本の剣術で手足を切断しゾーイは相変わらずの怪力で大剣を振り回した。
ファリアも長い斧で敵の甲冑ごと叩き割った。
セインは盾で防御し剣で戦った。
セイン
「攻撃だけじゃスキが出てきますよ!」
レイ
「わかってるよ!!」
レイは両手剣をクロスさせ敵の剣をガードしそのまま勢いよく前方に押し出しよろめいたスキに首をはねた。
遠くから見た女性陣3人は
メル
「うげ〜。あんな簡単に人間を殺せるのが不思議だわ。」
ナージャ
「メ.....メルさん。私たちも.....」
ムゼイア
「だね〜。」
3人は身を屈め敵が居ない方向に向かった。
ムゼイア
「この辺でいいかもー。」
ちょうど死角になる木々に隠れた。
ムゼイア
「んじゃあ撃ってみよう〜。」
ググッ.....
弓の弦を思いっきり引き放った。
砦から身を取り出す敵の首に命中し落ちた。
ナージャ
「す....すごいです!」
メル
「メルも参戦!」
ググッ......
ナージャ
「ちょ.....あれ......」
ナージャは指を指した。
メルとムゼイアはその方向を見た。
砦の正門から大きな図体が2体現れた。
兵
「オークだあああああ!!!」
兵
「オークが出たぞー!!!!」
メル
「オークって.....あのオーク?!」
レイ
「おい!!」
ゾーイ
「なんだこの足音.....」
セイン
「みんな!!伏せて!!」
セインの呼びかけで4人は伏せた。
その頭上をかすめたのは敵兵の死体だった。
ファリア
「おいおいマジかよ....オークじゃねぇか。」
ゾーイ
「死体を投げてきたのか....」
レイ
「なんで人間とオークが.....」
セイン
「敵兵が投げてきました。オーク自身も敵味方わかってないようですね。上位クラスの冒険者2、3人でやっと倒せる敵です貴方たちじゃ手に負えません。一旦引きましょう。」
クロエとペインは川から身を乗り出し裏口の見回りをしている敵兵に見つからず身を潜めた。
ペイン
「お前、血は大丈夫か?」
クロエ
「どうゆうこと?」
ペイン
「短剣使いは敵の血を浴びながら戦う。汚れても目立たない服で良かったな。袖はまくっておくよーにな。」
クロエ
「う、うん。これからどうするの?」
ペイン
「俺は何の武器を使うと思う?」
クロエはペインの身体を見た。
クロエ
「さあ?」
ペイン
「お前と一緒だよ。対人戦での短剣の戦い方を教えてやる。まあ見ておけよ。」
ペインは敵兵が後ろを見たスキに腰を下ろし静かに近寄った。
どこからともなく短剣を取り出し逆手に持って一気に首を切った。
敵兵
「カッ......ク.....カッ........」
ペイン
「どうだー?」
クロエ
「......すごいね!」
ペイン
「血は大丈夫そうだな。見てただろ?静かに後ろから近寄り一気に首を切る。以上。足音を立てずに素早く暗殺だ。」
クロエ
「わかった。」
2人は裏口のドアを開けた。
ドアを開けると蜘蛛の巣が壁に張り付き埃まみれで真っ暗な内部。
ペイン
「ここからは小声だ。わかったな。」
クロエはコクコクっと首を縦に振った。
「おい!みろよ!!」
「ああ。オークが出てきて皆逃げてやがる。」
「ギャハハハハハハ。だろうなあ!」
砦の小窓から弓兵2人
ペイン
「とりあえず2人....だな。俺について来い。」
クロエはペインと同じ体勢になりペインは弓兵の一人に指で合図をし一人ずつ背後に近づいた。
ズバッ
ペイン
「上出来だ。思ったより狭い砦だ。アサシンには持って来いの場所だな。で、、、」
クロエ
「ん?」
ペイン
「この視界の悪い暗い場所でなんで見えるんだ?」
クロエ
「あー。なんでだろう。」
ペイン
「そういえばヴァンパイア族の血が流れてるんだな。」
クロエ
「ヴァンパイア族は暗い場所がみえるの?」
ペイン
「そうゆうことだな。蝋燭の節約にいいだろ?はは。」
クロエ
「だね。」
クロエは笑った。
ペイン
「んじゃ上に行くか。」
螺旋階段になった石階段を足音立てず次の階に進んだ。
まずペインが覗き込んだ。
ペイン
「.....3人だ。」
クロエ
「この場合どうするの?」
ペイン
「そーだなぁー。」
ペインはそう呟きながら下の階に降りた。
クロエ
「下?!」
ペイン
「まあついて来い。」
ペインはクロエに身を潜めるよう言い机の上に置いてあった壺を落とした。
パリンッ!!
「おい!下から何か聞こえなかったか?」
「様子を見て来い。」
ペイン
「ほらな。」
クロエ
「なるほど。」
ペイン
「あと、耳もすませ。足音で何人来ているか把握するんだ。これは....一人だな。」
コツッ.....コツッ.....コツ.....
ペイン
「女だ。」
クロエ
「なんでわかるの?」
ペイン
「歩き方にクセがあるんだ。」
コツッ....コツ.....
足音がだんだん大きくなりクロエ達がいる階に着いた。
それと同時に後ろからクロエは左手で口を押さえ右手の短剣で首を切った。
クロエ
「痛っ!!!」
ペイン
「大丈夫か?」
クロエ
「噛まれた.....」
ペイン
「首を切るとき人間ってのは噛みちぎるくらい力強く噛み締めるんだ。左手は手袋した方がいいぞー。それと左手は口より額をクイッと上に持ち上げる感じかなー。首が出るだろ。声を出す前に素早く切れ。」
クロエ
「早く言ってよ〜。」
クロエはそう言いながら噛まれた手にポーションをかけた。
ペイン
「それと.....切った敵は優しく地面に置けよ。」
クロエ
「わかった。」
レイ
「やべぇ!このデカブツ足が早ぇえ!」
ドドドドドドッ!!!
物凄い勢いでオークは雄叫びを上げながら突進してきた。
遠くから見たメルはすかさず矢を放った。
メル
「みんな逃げて〜!」
ムゼイア
「オークに矢は効かないよ!」
メル
「足止めができればそれでいい!!」
スパッ!スパっ!!
矢は勢いよく2本オークの足に突き刺さった。
オークはよろめいた。
ナージャ
「効いてる......?」
ムゼイア
「足かあー!」
メル
「マグレで足に当たった......」
ムゼイア
「いいよぉー。3人でオークの足を狙おう!」
ナージャ
「は....はいぃ。」
シュパパパパパッッッッ!!!
3人は勢いよくオークの下半身を狙い撃ちした。
ゾーイ
「おい。」
ファリア
「はぁ....はぁ....んだよ!!」
全速力で走る4人は振り返った。
セイン
「メルさん達がオークの下半身狙ってますね。動きも鈍くなってます。」
レイ
「俺らで倒せねーか?」
セイン
「.....やってみますか。私が先頭で攻撃を受けます。怯んだスキに攻撃して下さい。」
セインは遠くのメル達に合図をした。
ナージャ
「メルさん....ムゼイアさん....あれ....」
メル
「攻撃をやめろってこと?」
ムゼイア
「だねぇ。」
ナージャ
「私...たちは砦を....」
セイン
「お、攻撃止みましたね。んじゃ、」
セインは盾を構え逃げた方向とは逆にオークに突進した。
ガンッ!!!!
オークの大きな拳と盾がぶつかり鈍い音を奏でた。
ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!
セイン
「さすがオーク。すごい力だ。でも....」
拳が盾にぶつかる瞬間セインはかわした。
ゾーイ
「よろめくぞ。俺は右からお前らは左から頼む。」
オークは力任せに殴った拳は空振りになり前方向によろめいた。
セイン
「今です!!首を狙って下さい!!」
左からファリアの大斧、レイの双剣。
右からゾーイの大剣、セインの剣。
4人は大きく振りかざし首を狙った。
オークの首は飛んだ。
4人で首を狙いやっと仕留めたオークは膝から落ち地面に転がった。
ファリア
「はぁ......オークやったぞ!!」
ゾーイ
「ああ.....。」
セイン
「休む暇はないですよ!あと1匹オークいますからね!しかも次のオークは......」
もう一人のオークは倒したほぼ裸のオークとは少し違った。
ボロボロのローブを纏い首には人間の骸骨で作ったネックレスを首にかけていた。そして片手には大きな杖。
そのオークは杖を振りかざし呪文も唱えた。
兵士達の頭上の空から赤い魔法陣が現れそこから火柱が数十の兵が焼かれた。
ムゼイア
「あれ......」
遠くに離れて矢を撃っていた3人でもとてつもなく大きな火柱の燃え盛る光が3人の顔を照らした。
ナージャ
「なに.....あの.....魔法....」
メル
「破壊....魔法...」
レイ
「おいおいあいつやばくねーか?!」
もちろんレイ達4人の顔にも火柱の光が顔に映った。
セイン
「オークマジシャン....」
ファリア
「オークマジシャンってなんだ?」
セイン
「本来オークは知能が低く武器は拳や木で戦う巨大生物なんですがあのオークマジシャンはごく稀に突然変異で魔力を宿し魔法を使える身体を身につき産まれる。」
ゾーイ
「魔法を使う相手はちょっとしんどいな。」
セイン
「もちろん僕の盾でも魔法は防げません。」
レイ
「じゃあどうすんだよ!!」
セイン
「あの杖を何とかすれば.....」
ファリア
「杖っつったって...自分の身体の一部のように振り回してるあれをか?!正気か?!」
セイン
「一旦退却しましょう!!」
4人は一斉にオークマジシャンとは逆方向に全速力した。
ペイン
「結構上まで来たな。」
クロエ
「うん。もう少しで最上階に着く頃じゃないかな。」
2人は螺旋階段を上り明らか別の階とは比べものにならないくらい豪華な階に着いた。
壁には松明が飾られ横の机には知らない国旗のマークが書いてある手紙が置かれていた。
ペイン
「このマーク....」
クロエ
「知ってるの?」
ペイン
「まさかな.....」
奥には玉座が1席。
ただ一人座っていた。
赤のローブを身に纏い全身赤い甲冑で松明の光が反射していた。
????
「ようこそ。黒海団のアジトへ。」
ペイン
「誰だ?」
????
「君たちがこの砦に入る時から存在は分かっていたよ。」
その男は立ち上がった。
ペインとクロエは自然と短剣を取り出し戦闘態勢に入った。
ただならぬオーラだった。
????
「よくここまで来たな。」
ペイン
「お前は何だ?」
????
「そうだな。黒海団の幹部ってところか。」
ペイン
「黒海団の目的はなんだ。何故こんなことを....」
????
「兵隊を集めている。そうでもしなきゃ世界の魔術師は殺せないからな。年々魔法を扱える奴は減っているとはいえまだ数は多い。」
ペイン
「何故魔術師を殺す....?」
????
「......」
ペイン
「答えろ。」
????
「人間族は魔法の扱いに一番乏しい種族。最初は魔法に憧れたが戦争を繰り返す度に魔法に恐怖を感じた。お前らも人間ならこの気持ち分かるだろう?まだ黒海団は小さな組織で3つの大陸にしか存在しない。だがいずれより拡大し全世界に拠点を置き魔術師を滅ぼす未来は近い。」
ペイン
「それがアトランティス王による命令か?」
????
「.....どうかな。」
ペイン
「クロエ。こいつはヤバそうだ。お前は手を出すな。」
????
「遅いよ。」
玉座の目の前に立っていたはずの男は消えて後ろにいるクロエの目の前で剣を鞘から抜き出していた。
ペイン
(早い!!)
クロエは早すぎて身動き取れず男の剣が首に切りかかろうとしていたのをかわすことも出来なかった。
瞬時にペインは短剣でその剣の動きを止めることができた。
ギギギギギ......
剣と短剣が交わり金属音が部屋に響いた。
????
「早いな。」
クロエは短剣で男の首を狙った。
謎の男はペインの短剣を振り払い下がった。
ペイン
「思ったより早いな。こいつ。本当に剣士かお前。」
????
「......さあな。」
謎の男は前に倒れる態勢になり走り出した。
ペイン
(来る!!)
ムゼイア
「砦は静かになったねぇ〜。」
ナージャ
「で...でも....あのオーク....」
メル
「ちょっとヤバそうだね。」
オークマジシャンは休む間もなく魔法を唱え火の破壊魔法を敵味方関係なく打ち続けた。
メル
「あいつ戦場荒らしてるだけじゃん。」
ムゼイア
「放っておいた方が敵も減りそうだねぇ〜。」
ナージャ
「で...でも...止めた方が....」
メル
「止めるったってあれをどうやって止めるの?!」
ムゼイア
「んー。」
ムゼイアはオークマジシャンの隙を探した。
ムゼイア
「あ!」
メル
「なに!」
ムゼイア
「あのオークマジシャン詠唱時間長くない?」
メル ナージャ
「それだ!!」
ムゼイアはオークマジシャンが詠唱を唱える間に矢を放つ事を思いついた。
メル
「んじゃあ3、2、1で打とう!」
ムゼイア
「ちょっと待って!」
ムゼイアは先端が尖っておらず代わりに穴の開いた鉄の鉄球が先端についた矢を取り出した。
ムゼイア
「僕が3、2、1って言うよ〜。」
ムゼイア
「3、2......」
ムゼイアは放った。
物凄い高音の鈴の音が辺りに鳴り響いた。
フューーーー!!!!!!!
ムゼイア
「1!!!!」
ムゼイアは瞬時に普通の矢を取り出した。
3人は一気に矢を放った。
スパッスパッスパッ!!!!!
オークマジシャンに3本の矢が突き刺さった。
セイン
「ん?この音......」
セイン、レイ、ゾーイ、ファリアは振り返った。他の兵士たちも振り返った。
レイ
「おい!あのオークに矢が!!」
セイン
(さすがです。メル、ナージャ、ムゼイア。)
「今です!!怯んでます!」
ファリア
「さすがムゼイア。行くぞ。」
ゾーイ
「結構走ったのにまた戻るのか....クソッ!!」
ナパームストロング
「弓兵よ。あのオークに矢を放て!!」
弓兵は矢の雨をオークに浴びせた。
ナパームストロング
「弓兵!剣に変えよ!残りの残党を殺せ!!!」
弓兵は弓を捨て剣を抜き雄叫びを上げながら突っ込んだ。
セイン
(助かります。隊長。)
セインを先頭に無数の矢が突き刺さったオークの腹を刺した。
続けてゾーイは胸を。ファリアは右腕を落としレイは両手剣でオークの首をはねた。
オーク2体は倒れ後は残り少ない敵となり優勢となった。
キンッ!
キンッ!
キンッ!
剣と短剣が火花を散らしながら攻防を繰り返していた。
????
「やるな。」
ペイン
(短剣じゃきついな。)
キンッ!!!!!
今までの音より大きな音をし短剣が吹き飛び地面に突き刺さった。
????
「短剣と剣じゃリーチが違いすぎる。負けを分かってて挑んできたのか?」
ペインの突き刺した剣はペインの肩を刺された。
クロエ
「ペイン先生!!」
ペイン
「く......」
ペインは倒れ謎の男は剣に付いた血を振り払った。
????
「短剣じゃ勝てねえよ。剣だったら勝てたかもな。まあもう無理だけど。」
そう言って剣を首元に優しく置いて振りかぶった。
クロエ
(やばい......やばい......ペイン先生が殺される!!!)
クロエは無意識に走り出していた。
視界が急に紫になり生命を持つ者は白く見えた。
????
「!!」
クロエは玉座の椅子の前で立ち尽くした。
長くて紅い髪はなびいた。
謎の男は首が飛び首からおびただしい血が吹きペインはその血を浴びた。
クロエはペインの方を向いた。
色素の紅い目は血のように真っ赤になり暗闇でその紅い目を
ペイン
「クロエ.....お前......」
クロエはその場に倒れ気を失った。