BATEL
第5章 適正検査
「見ろよ!あれ!すげぇえええ!!!」
見たこともないような大きな城に城下町が広がって囲むように岩の塀が敵の侵入を防ぐ城壁となりまた更に囲むように川のような水路が勢いよく流れていた。
監視塔から衛兵が笛を鳴らしオーガ族の衛兵3人が歯車を回し城壁から垂れ下がるとてつもなく大きな橋を下ろしていた。
鉄のチェーンからガチガチと音をたてながら水路を渡る橋をかけ、馬車は動きメルーン王国に入門した。
〜ユベリア大陸最大の国メルーン王国〜
入門するとすぐに中心に噴水がある広場につき、馬車から子供達がゾロゾロと出てきた。
キール村出身の子供でも相当な数がいるのに他の村からきた子供が総勢200人はいるだろう。
それでもまだまだ余裕な広場はどれだけ大きいか分かる。町には15年に一度適正検査ではなく「英雄祭り」という名でパレードや屋台がありかなりの人が大賑わいとなっていた。
広場の子供達を一目見ようと大勢の観客も押し寄せて衛兵がなんとか止める形となっていた。
「皆さま、長旅ご苦労様でした。」
衛兵の1人が大勢の子供の前で話を進めた。
「これから適正検査が始まりますがまず各国では英雄祭りと称して行ってます。15年に一度、英雄になるであろう逸材が誕生するかもしれない特別な日なのです。そして本日、貴方たちは一人一人が主役なのでどんな結果であっても恥じぬよう生きていきましょう。」
レイ
「生きていきましょう。ってなんだよ。勝手に生きていくわっての。」
レイはクロエに小声で囁き笑った。
次に使者が変わって言葉を発した。
「それではお手元に届いた手紙をご覧ください。そちらに番号が書かれています。その番号は受付番号ですので順番に検査を行います。では1番〜20番までの方は正面に見えます国王の神殿にお越し下さい。それ以外の方は時間が来ましたら自動に転移されますのでこの国内であれば自由にして結構です。」
子供達は一斉に散った。
クロエの番号は124番だった。
レビィ
「俺とクロエは1桁違いだから一緒に行けるな。レイ、お前は何番だ?」
レイ
「俺は127番だよ。」
レビィ
「ってことは村毎で検査受けるみたいだな。適当にぶらつくか。レイ、お前も来るか?」
レイ
「行こう行こう!」
レビィ
「ミザロはどうするよ?」
ミザロ
「私は久しぶりにメルーン王国に来たので少し薬屋に興味ありますから一人で行きますよ。」
3人はミザロにお別れをし、街を探索することにした。
屋台で見たことのない名物を食べたり見たことのない種族に挨拶したりパレードを見物したりと堪能した。
クロエ
「ねえ、この建物なんだろう。」
神殿には負けないくらい大きな建物で高い塔の上には国家ではない旗が掲げてあった。
レイ
「ちょっと見学してみようぜ!」
2人をレビィが保護者のように付いていくことになっているがレビィ自身も楽しんでいる様子で3人は建物に入った。
そこには弓、大きな杖、大剣などいろんな武器を持った冒険者がいた。
「あら、可愛いお客さんですね。見学ですか?」
カウンター越しに聞こえた声の主は猫耳族のスーツ姿のお姉さんだった。
「ここは冒険者が集うメルーンギルドと言いこの国の冒険者ギルドとなっております。」
レビィ
「へぇ、ここがギルドってとこかー。」
クロエ
「なんか怖そうな人たちだね!」
レイ
「なあ、姉さん!俺も冒険者になりたいんだよ!」
少し笑いながらお姉さんはこう言った。
「すみません、冒険者は13歳にならないと登録ができません。もう少し大きくなったらまた来てくださいね。」
優しくこう言った。
クロエ
「ねえ、お姉さん!あの大きな掲示板ってなあにー?」
「あの掲示板は毎日のように張り紙が貼られるんです。その張り紙を持ってこのカウンターに持ってくれば任務が遂行でき達成出来れば報酬を得る仕組みとなっております。簡単なEランクから難しいSランクまでレベルがありその冒険者に見合った任務を受けれる形となっております。」
「そしてあちらの掲示板はまた少し特殊な任務です。」
大きな掲示板の横に少し小さめな掲示板があった。殆どの張り紙に顔写真と金額が書いてあった。
レビィ
「もしかして懸賞金か?」
「そうです。そちらの掲示板は賞金首です。その任務は受ける方は滅多にいませんが危険人物ばかりですので手を出さないようにという思考で皆様は考えているのでしょう」
レイ
「そりゃそうだよな。あえて危ない奴の首を取ろうとしたら返り討ちにされるよ。」
急に3人共地面から陣が現れた。
「あら、適正検査前でしたか。転移呪文ですね。御武運を祈ってますよ。」
光に包まれ3人は転移した。
転移先には外壁に囲まれ豪華な装飾が施された大きな部屋。何か食べている最中に転移された者、骨董品を購入している最中の者、困惑しただただ慌てて物を隠す数十人の子供達。
「急に転移するとかきいてないぞ!」
どこかの子供が叫んだ。
さまざまな種族の衛兵たちに見守られていた。
衛兵
「こちらを通ったら中庭がございます。そちらを突っ切ると魔導室がございますのでそちらで検査を受けていただきます。それではどうぞ。」
ミザロとレイと兄のレビィの後ろをクロエは付いて行った。
中庭には色鮮やかな花があり中央には黒く朽ちた木がポツンと植えてあった。
クロエ
「木?」
「朽ちて焦げているようにみえるでしょ?この木生きてるのよ。」
クロエは歩きながら横を見るとクロエより少し背丈が高く耳は長くピンク色でピンと立ち尻尾にも薄いピンク色をした今流行りというファッションだろうお腹を出した猫人族の女の子だった。耳と尻尾を隠せば人間と見分けつかない。
メル
「あっごめんね、私キール村の....って転移されたのはキール村出身ばかりだもんね!私メル=ティーン。メルって呼んで頂戴ね!」
クロエ
「私はクロエ=ナーヴァ。クロエって呼んでね!」
レビィ
「なんだ。また友達出来たのか。」
クロエ
「私のお兄ちゃんだよ。それでさっきの木ほんとに生きてるの?」
メル
「うん。ほんとだよ!おじいちゃんが言ってたんだー。」
2人は意気投合し魔導室に着くまで歩きながら話した。
中庭の渡り廊下に1人豪華なドレスに身を包み金の冠をした女性が子供たちを上から見ていた。
(ん?.....)
その女性は1人の小さな女の子を見つめた。
(あの子.....まさか.....!!)
「衛兵!!衛兵はいるの!」
衛兵
「なんでしょうフェルト様」
フェルト
「下を見なさい。歩いている小さな赤毛の女の子見える?検査が終わり次第あの子と兄弟を王室に連れてきなさい。」
衛兵
「は!!」
フェルト王妻は重たいドレスを掴み少し小走りで王室に向かった。
キール村率いる衛兵は重たいドアを開いた。
そこも豪華な造りで壁には本棚がびっしり入っており中央には何か大量の青色の液体が入った大きな丸いガラス製の球体にそして地面には1人入れる陣が書いてあった。
そのそばに豪華な机、豪華な椅子には1人胸元が開いて膝上しかない白衣を着た優しそうでセクシーな人間族の女性が座っていた。
「今から種族鑑定、適正属性を鑑定検査をしますのでそれぞれ説明させていただきます。まずは種族鑑定。こちらは種族ごとに適正な職に結びつけることを表します。生成生産職、戦闘職2つありますがどの種族でも得意不得意があります。努力次第でどうにかなりますがね。」
試験管はフフッと少し笑った。
「次に適正属性。五大元素が用いられそれぞれ水、風、土、火、雷となりますがごく稀に光、更に希少な闇属性が存在します。基本この5つの属性に属し得意な属性の呪文が操ることが出来ます。例えば火だとファイアボールとか雷だとサンダーボルトとかです。魔法に適しなくても多少は操ることができます。それも努力次第ですが。」
また試験管は笑った。
「それでは1人1人名を呼びますのでこちらの魔法陣に入って下さい。」
「ミザロ=ガラリア」
ミザロは少し怯えながらも魔法陣の中に入った。青色の液体は緑色に変化した。
「種族はリザードマン族ね。魔法適正は少しあるようね。属性は風。」
ミザロ
「風かぁ〜まあ代々風だしなぁ」
少し不満げに言った。
衛兵
「検査が終わり次第こちらのドアから退出して下さい。」
ミザロは退室した。
「次はサザリア=ネルバー」
メルが少し小声でクロエに話した。
メル
「クロエ?知ってる?光は必ずこの世に導きをもたらし闇はこの地を破壊し災いをもたらすって。」
クロエ
「ゼトおばさんに聞いたことある。」
メル
「悪魔族は皆闇属性らしいよ。」
クロエ
「えー怖ーい。あはは」
メルとクロエはクスクス笑っていた。
ほんとに昔から仲が良かったように仲良しになっている姿を見てレビィは呆れていた。
「メル=ティーン」
メルは笑っていた表情が一瞬で冷め魔法陣の中に入った。ガラスの水晶の液体はすぐに黄色に変わった。
「あなたは猫人族ね。あら、あなたならいいメイジになれると思うわ。属性は....雷ね。」
満足げにメルはドアに向かった。
「レイ=スティンバー」
違うドアから開いた音が聞こえた。
衛兵がゾロゾロと入って最後には王妻フェルトが入ってきた。
レビィ
「あれってどう見てもお姫様だよな?」
クロエ
「うん。」
フェルト王妻は試験管に向かって小走りで走りコソコソと小声で話した。クロエの方に目を向けすぐにフェルト王妻は壁に走りこちらの様子を見て待機する形になった。
「こちらは王の妻フェルト=ネフィリア=カルセ王妻です。皆、失礼のないよう謹んで検査を受けましょう。」
試験管がそう言い、レイの方を見た。
レイ
「試験管さんよ。皆最初から謹んで検査受けてるよ。」
クロエはクスクス笑った。
ガラス製の玉は赤く染まった。
「あなたは人間族。いいナイトになれるわ。属性は火ね。」
よっしゃー!と大声で叫びドアに向かった。
次々と名前が出てはドアに行き結局クロエとレビィは最後になった。
フェルト王妻が試験管の横に座った。
ドアが開いた。
レビィ
「あれ、王様?!」
真っ赤なローブが床をすすり金の刺繍が施しガッチリした体格で整った髭、王冠を被りパパと同じくらい若くそれでも王の風格があり皆一目置かれていた。
バミリオ王
「いかにも。バミリオ王だ。確かにフェルト姫が言うた通りじゃの。」
レビィは片膝をつき頭を下げたのを見てクロエも真似をして頭を下げた。
バミリオ王
「よいよい、頭を上げよ。」
気がつけば部屋に衛兵が数人しかいなかったのが数十人、使者、側近、王の使い含め凄い数になっていた。
バミリオ王はクロエに近づきしゃがんで頭を撫でた。
バミリオ王
「そなた達にいくつか質問するがよいかの」
クロエ
「う、うん。いいよ。」
レビィ
「こら、クロエ!!」
バミリオ王
「ははは。よいよい。クロエ...というかの?」
クロエ
「クロエ=ナーヴァです....」
クロエは少し怯えた様子で答えた。
バミリオ王
「クロエは何才かの?」
バミリオ王は頭を撫で続けた。
クロエ
「7才です....」
バミリオ王
「それではこちらがクロエのお兄さんかの?」
レビィ
「レビィ=ナーヴァで御座います。キール村で父は魔法研究をしているジョセフ=ナーヴァ、母はセリア=ナーヴァでと申します。」
バミリオ王
「ほお。そうじゃったか。ジョセフの子供たちか。ジョセフにはいい仕事をしてもらうておってな。いつも感謝しておるのよ。母はセリアか。」
クロエは涙ぐんでいたのを王は見て少し慌てて抱きしめてあげた。
バミリオ王
「すまんかったのぉ、驚かせてしまったか。ほら、飴は好きかの?」
バミリオ王は真っ赤なローブのポケットから飴を取り出しクロエに渡した。
クロエ
「ありがとう...」
少し落ち着いた様子だった。
バミリオ王
「質問はもうやめよう。さあ、レビィとやら。魔法陣へ。」