メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
「は、暖人?」

「どこにも行くなよ。」

切なげな声。暖人の胸と両手と両脚で体を包まれた状態で顔まで寄せられ耳元でささやかれてドキンとする。彼の体温も息遣いも全部伝わってきて心地よい。ここにずっと閉じ込められていたい、なんて思ってしまう。

───これは・・・私も彼の首に手を回してもいいのだろうか。イベントの時、布の中で彼の背中に手を回したし・・・。

そう思ったけれど首となるとなんだか恥ずかしくて手が動かなかった。あんなに彼に触れたいと思っていたくせに、なんて意気地無しなんだろう。突然のことに体が固まってしまったようだったけれど、なんとか口を開く。ギギギ・・・と音がしそうだ。

「・・・コ、コーヒー入れに行くだけだよ?」

「そうじゃなくて・・・お前、公園で初めて会った時、急にふっと現れたからまた急に消えちゃいそうで怖いんだよ。」

「初めて会ったのは電車だよね。」

「そうだけど・・・。」

弱々しい彼の声はなんだかとても魅力的で私はその声に導かれるように口を開いた。
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