メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
「・・・あの、私が消えたら、暖人は嫌・・・だったりするの?」

さりげなく聞こうと思ったのに、随分真剣な声になってしまった。もしそうだったらすごく嬉しい・・・期待を抱きながら暖人の答えを待っていると、彼は焦った様子で返してきた。

「は!?い、いや、嫌っていうか、その・・・あ、さ、酒!」

「お酒?」

「前お前に潰されて悔しかったから、次は俺がお前を潰さなくちゃいけない。負けっぱなしで終われないからな。だからお前がいなくなったら困るんだよ。勝ち逃げなんて許さねぇ。」

「潰したわけじゃないよ。」

「あ?俺が勝手に潰れたって言うのかよ。そんなこと言うやつはどうなるかわかってるか?」

「・・・いいよ、どうなっても。」

「!?!?は!?何言ってんだ、お前!?」

自分の口からこぼれ出た言葉に自分でも驚いた。暖人はひどく慌てて私を膝から降ろした。途端に寂しい気持ちになる。

「早くコーヒー入れろ!30秒以内!」

「それじゃお湯も沸かないよ。」

「時空を歪めろよ!お前なら出来るだろうが。」

「時空は歪められないけど、スプーンなら曲げられるよ。」

「・・・なんだそれ。めちゃくちゃ見たいじゃねぇか。」

暖人がふっと笑う。それだけで胸の中の発射ボタンが秒読みもなしに押され、心がロケットのように大気圏を飛び出してしまったかと思った。この笑顔をこれからもずっと見ていたい───出来れば誰よりも近くで。
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