メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
『ごめん。大人にしちゃった。』

朝5時過ぎ。玲央から届いたそのメッセージの後に表示されていたのは杏花の顔のアップの写真。髪の広がり方からして、寝ている彼女を上から撮影した写真のようだ。

肩が出ていて鎖骨の下まで写っており、何も着ていないように見える。やたらと艶っぽい表情で瞳と唇は潤んでいて、首元には赤い痕。

何かを知ってしまったような雰囲気をかもし出す杏花はとても綺麗で、その美しさが俺の心を突き刺してえぐった。彼女が俺の手の届かないところに行ってしまったように感じる。

───まさか───!?

俺は部屋着のまま、鍵を閉める間も惜しんで飛び出した。


*****

「杏花!」

俺はドアを開けて叫んでいた。玲央と玲美のオフィス兼アトリエとなっているマンションの地下の一室は在室中はいつも鍵がかかっていないと言っていた。

玲央と玲美は俺の家の最寄駅の3つ隣の駅近くのマンションに隣同士で住んでいる。エントランスから玲央の部屋のインターホンを鳴らしたものの出なかったので、もしやと思って再び電車に乗りそこから2つ先のターミナル駅近くにあるアトリエの方に向かった。

ここには以前来たことがある。俺が作った時計の一つをここに置きたいと玲央達が購入したので届けに来たのだ。自分の時計がどんなところに置かれるのか非常に興味があったし、俺自身はいつ持てるかわからないアトリエというものを見てみたかったのだ。

地下だからか秘密基地のようなお(こも)り感があったが、普通に住居用の部屋なのでシャワーもあったし───ベッドも置いてあったはずだ。
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