メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
「・・・っ。」

杏花から声にならない声が漏れた。その声に煽られ俺はより強く彼女の肌を吸った。ひとつではとても足りなくて何ヵ所にも口づけた。

メイクのキスマークのすぐ近くを、こちらが本物であることを誇示するようにひときわ強く吸った。キャミソールを押し下げて胸の谷間付近の際どい部分にまでも痕をつけた。

触れるのに夢中になり過ぎて、彼女の表情を見る余裕もなかったことを後で後悔した。


今までにこんなに唇を酷使したことはない。ようやく離れると杏花は切なげな表情でしばらく俺を見てから、鏡を取り出して俺がつけた赤黒い痕達を確認していた。

「・・・ごめん。そんなに濃いのたくさんつけて。そもそも、こんなとこでこんなことするなんてどうかしてるよな。本当にごめん。」

「・・・おまんじゅうについてる焼印みたい。肉まんには形的についてないこと多いけど、あんまんにはよくついてるよね。あれってイラストだったりもするけど『どこどこの会社のものです。』って表す印の時もあるよね。」

頭を下げて謝ってから目線を上げた俺に彼女は痕に触れながら嬉しそうに言う。その姿を見て急に冷静な自分が戻ってきた。

俺の想いを刻み付けた彼女の体をいつまでも見ていたい気持ちを押し込めて『しまえよ。』とブラウスのボタンを閉めようとすると杏花が聞いてきた。

「・・・これってすぐ消えちゃうのかな。」

「え?ああ、数日で消えるから安心しろ。」

俺の指は彼女の次の一言でそのまま固まった。
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