メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
高園(たかぞの)さん。」

そう呼ぶと店長は目を見開いて固まった。

「あれ・・・?高園さん?」

「・・・いや、その、想像以上の破壊力で・・・しかも連続でなんてかなり・・・下の名前なんて呼ばれた日には・・・。」

(りく)さん。」

「い、いやいや!」

店長はおろおろとし出した。

「嬉しいけど、勘弁して・・・苗字にしておいて。」

「かわいい。陸さん。」

「!だから呼ばないでって・・・それに、かわいいなんて・・・その言葉一億倍にして返すよ・・・。」

「一億倍って・・・あはは。」

「え?そんなにおかしいこと言ってないでしょ?」

「だって、り・・・高園さんは見た目は少年みたいだけど、いつも穏やかで落ち着いていて大人って感じだから、そんな風に言うのはギャップがあって。」

「ギャップ萌えしちゃった?」

「うん。」

頷くと店長は顔を赤らめて慌てた様子でメニューをバサバサと広げた。

「あ、えっと、料理はコースを頼んであるんだけど、杏花ちゃんお酒飲んだら?ここ、美味しいワインがたくさん揃ってるんだよ。」

「大丈夫です。高園さん運転だから飲めないのに私だけ飲むわけにはいかないし。」

「そんなの気にしないで いいよ。俺、杏花ちゃんが幸せそうにお酒飲んでるところ見るの大好きだから見せてよ。今日、お礼なんでしょ?ほら、どれがいい?」

店長はワインのメニューを見せてきた。確かに魅力的なラインナップだ。

「えーっとじゃあお言葉に甘えて・・・。」

「残念ながらボジョレー・ヌーヴォーはまだだけどね。そう言えばこの間ワインブドウを食べる機会があったんだ。皮が厚くて食べづらかったけど、生食用ブドウより甘くて美味しかったよ。やっぱり糖分がアルコールに変わるから甘く出来てるんだね。甘いもの苦手だけどフルーツならいけた。」

「高園さんて甘いもの好きそうなのに苦手なの意外ですよね。」

そう言うと店長は困ったような顔になった。
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