メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
ハロウィンの後、暖人は明らかに私と距離を置いていた。時計の制作を進めた後は今まで通りお茶をしたし帰りはバス停まで送ってくれたけれど、出来るだけビジネス的に接しようとしているように感じた。

彼は私の想いをわかっていて、それが迷惑だから避けているのだろう。

ハロウィンの夜もロリポップ越しのキスの後彼が再び近づいてきたのはキスをしようとしたわけではなく何か別の理由に違いない。それなのに私が勘違いをして目を閉じたので引かれてしまったのだろう。もし二人が同じ気持ちであったなら、ドラマや漫画やネット小説ではあの後には甘ったるい展開が待っているはずだ。

あの時私が彼の心をかき乱す、というようなことを彼は言っていた。それはあくまでも私を大人の女性として見てくれている、というだけで、私に恋をしてくれているという意味ではないのだろう。大人の女性として見てもらえているだけでも充分なのに、好きになってほしいと思う私は本当に欲張りだ。そうやって欲を出すから彼に距離を置かれてしまうのだ。

彼は今までのまま、家族でも友達でも恋人でもない関係でいたいのだろう。もしかしたら今後彼の方から私と関わるつもりはないのかもしれない。

───時計が完成した今、連絡する理由がなかったら連絡できないし、会う理由がなかったら会えない・・・でもこれでいいんだよね・・・。
< 161 / 290 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop