メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
しかも杏花と離れようと決心したくせに、もしかしたら彼女の方から連絡をくれるかも、なんて期待していた。しかし連絡が来ることはなかった。

彼女も俺のことが好きなのかもしれない、彼女も俺を求めてくれていると思ったのは俺の思い上がりで、彼女にとって俺は一緒にいれば親しく過ごすが、離れてしまえば特に寂しいと思うこともない、通りすがりの存在だったのだろう。

───そうだよな。俺なんてその程度の男だ。

これから彼女は社会に出てたくさんの男と出会い、その中で誰かと恋をして、俺のことなんか跡形もなく忘れてしまう。

それでいい。それが俺の望んだことだ。数ヶ月の間、俺は人生で初めて本気で恋をした。クリエイターとしても彼女にたくさんの光をもらった。それで充分だ。彼女が忘れてしまっても俺は一生彼女のことを忘れない、というか忘れられないだろう。

杏花のことをこれ以上思い出すと心がもたなそうだったので気持ちを切り替えようと思った。『水持ってくるから。』と俺の左手を掴んでいる玲美の手を振り払う。

するとその反動で彼女の体が俺の方に倒れてきた。玲美はその流れで素早く俺の背中に手を回し俺の胸に上半身をぐいっと押し付けてきた。ボリュームたっぷりの柔らかいものが当たる感触がする。
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