メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
思い出にすると決めたくせに毎日暖人のことばかり考えてしまい、順調に進んでいた卒論に集中出来なくなり、数日前締め切りギリギリになんとか提出した。

卒論のテーマは『世界のお菓子文化の比較』にした。国際文化学部なので、同級生達の卒論のテーマもお茶とかお祭りとか玩具とか自分の好きなものについての世界の文化の比較をテーマにしている論文が多い。

夏までに書いていた一章───世界各国のお菓子文化の特徴───は納得のいくものが書けた。でも二章───各国の文学におけるお菓子の役割の比較───は専門書の引用の合間に浅い考察を挟んだだけのものだった。

本文が始まる前につけるサマリー、つまり要約文のみ英語で書くようにと指示があったが、それも中学生レベルの出来だ。

とてもじゃないが4年間も学んできたものの集大成とは言えないようなお粗末な論文を提出してしまい私はひどく落ち込んでいた。学費を出してくれた親にも熱心に指導してくれた教授にも申し訳なくなってくる。

今日はクリスマス。バイト先の雑貨屋は忙しかった。イブが終わっても大切な人に贈るプレゼントを華やいだ表情で選びに来るお客様達が来店する。店内には笑顔と誰かを想う優しい気持ちが溢れ、イルミネーションのように美しく輝いていた。

それなのに私はレジの打ち間違いやラッピングのリボンの色を間違える、プレゼント用ではなくご自宅用の商品の方をラッピングしてしまうなどのミスを連発してしまった。大学一年からここで働いていてこんなミスをしたことはなかった。自分が情けなくて仕方がない。
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