メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
玲央の拳を手のひらで受け止めて『落ち着いてちゃんと聞けよ。』と睨みをきかせた。

「玲美が寝た。俺の腹の上で。お前と同じで酒弱いのに飲み過ぎたんだろうな。」

あの時、杏花とのことで投げやりになっていた俺は、玲美の誘いに乗りそうになっていた。でもすんでのところで、彼女にとっても俺にとってもこれは間違っていることだと思い直し、彼女の唇を避けた。すると玲美は『なんでよ・・・なんで・・・。』と泣いて俺の腹を叩きながら眠ってしまった。怒ってはいたが、なんだか玲美も一線を越えなかったことにホッとしているように見えた。

「・・・あいつどんくらい飲んだ?」

玲央はまだ目を見開き拳を振り上げたまま聞いてくる。

「生中一杯とカシスオレンジ半分かな。」

「まじか!!めっちゃ飲んでるじゃん!すげえ!ビールなんてあんなくそ(にげ)ーもんよく飲めたな!」

「だからお前が心配するようなことはなかったよ。」

「でも、お前・・・見たろ。レミの・・・。」

じとっと見てくる目は玲美と同じだ。

「見てねーよ。コートとニットだけ脱いでカットソーとスカートの状態で夢の世界に旅立ったからな。」

「よかったあああ!俺、小4以降レミと風呂入れなくなったからずっと見てないのにお前が見てたらと思うと・・・!」

「いや、今までの彼氏は見てるだろ。」

「えええ、てか、ホッとしたらめっちゃ手痛くなって来たんだけどぉ!!いってえ!まじ半端ねえ!俺の黄金の左手がぁ!」

俺のツッコミは届かなかったようで玲央は『プシューッ。』と音を立ててしぼむ風船のように力が抜けた様子でその場に座り込んだ。
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