メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
*****

「・・・なんで、お前達と忘年会なんてしないといけないんだよ。」

「いーじゃん。どーせ暇でしょ。この店、玲美と3人でコース予約してたのに、あいつ『制作があるから忘年会なんてしてる場合じゃない。』とかってドタキャンしてさ。ハルのせいでやたら制作に熱中しちゃってるからなんだし、責任とってよね。」

地べたに力なく座り込んだかと思ったら『よし、飲み行こ♪』と突然勢いよく立ち上がった玲央に無理矢理連行され、俺はやたらと洒落たダイニングバーに来ていた。こういうところはただでさえ居心地が悪いのに何が悲しくて玲央と津村と飲まなくちゃいけないんだろうか。しかしあの日一瞬でも玲美に手を出そうとしてしまったことが後ろめたく仕方なく席についた。


普段あまり飲まないワインで俺はだいぶ酔ってしまっていた。そのせいか別にこいつらと仲が良いわけでもないし、普段なら自分のことを話したりなんかしないのに、杏花とのことを全て話してしまった。俺が話し終わると玲央は目を丸くして珍しい動物でも見るかのようにこちらを見た。

「え~?そんなんでキョウのこと手離したわけ?」

「手離すっていうか、元々俺のもんじゃねえし。一緒にイベント出て、あいつの友達へのプレゼント作って、それで終わりだよ。もう関わる理由ねーんだよ。」

「そのセリフ、今ここにキョウがいても言えるわけ?」

玲央がズバッとついてくる。なんでこいつはいつもこう鋭いんだ。今更ながら話してしまったことを激しく後悔する。
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