メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
・・・にしても、アラサー男3人の忘年会なんてムサさ満点だろうに、うち2人がイケメンだとそんなこともない。
洒落たインテリアが置かれソファ席が多いこの店では、いわゆる『女子会』をしている客が多い。俺達の席では玲央と津村が壁を背にして並んで座り、俺はテーブルを挟んで彼らと向かい合った二人がけソファの真ん中に座っていて、他の客には背中を向けていた。その背中に女性達からの視線がガラスの破片のように刺さってくる。『手前の男、邪魔。』と思っているに違いない。
まず華やかで目立つ玲央に捕らえられた彼女達の視線は、隣で麗しく微笑む津村に移動する。相当な眼福に違いない。玲央が太陽、津村が月、そして俺はそれを隠してしまう忌々しい雲なのだ。
もし俺がこいつらみたいな顔だったら今とは違う人生を送ったのだろうか。
いや、見た目はともかく、俺は自分の人生をそれなりに気に入っている───いや、気に入っていた───今の自分はただのボロ雑巾だ。
自分の中できちんと納得して杏花と離れることを決めたはずなのに、離れるのは時計に専念する為だったのに、制作に全く身が入らない。
心の奥深くまで根を張っていた恋心を無理矢理引っこ抜いたのだが、その後に空いた穴は心の他の部分にまで影響を与えるくらいデカくて深かった。
頭の中に小さな杏花がいっぱい住んでいるみたいだったが、一人ずつでもいいから出ていってほしいと思っていた。なのに、一人も出ていかないどころか俺の頭の中で増殖を始め、その穴の中で暮らし始めた。
自分がこんなにも未練たらしく脆い男だったなんてがっかりだ。一匹狼が聞いて呆れる。
「無駄にごちゃごちゃ考えてないで好きなら一緒にいればいいのにー。全く理解できないわー。ショートケーキの上の苺食わないで残すくらい理解できないわー。」
玲央はストローでオレンジジュースに入っている氷をいじりながら言う。ジュースを薄めようとしているのだろうか。
「そりゃ、出来ねーだろ。お前みたいな天才イケメンには。」
「そうだね。俺、天才イケメンだもんね。」
玲央はいつものように嫌みなくさらりと言いやがった。こいつは思い悩んだりすることがあるんだろうか。
洒落たインテリアが置かれソファ席が多いこの店では、いわゆる『女子会』をしている客が多い。俺達の席では玲央と津村が壁を背にして並んで座り、俺はテーブルを挟んで彼らと向かい合った二人がけソファの真ん中に座っていて、他の客には背中を向けていた。その背中に女性達からの視線がガラスの破片のように刺さってくる。『手前の男、邪魔。』と思っているに違いない。
まず華やかで目立つ玲央に捕らえられた彼女達の視線は、隣で麗しく微笑む津村に移動する。相当な眼福に違いない。玲央が太陽、津村が月、そして俺はそれを隠してしまう忌々しい雲なのだ。
もし俺がこいつらみたいな顔だったら今とは違う人生を送ったのだろうか。
いや、見た目はともかく、俺は自分の人生をそれなりに気に入っている───いや、気に入っていた───今の自分はただのボロ雑巾だ。
自分の中できちんと納得して杏花と離れることを決めたはずなのに、離れるのは時計に専念する為だったのに、制作に全く身が入らない。
心の奥深くまで根を張っていた恋心を無理矢理引っこ抜いたのだが、その後に空いた穴は心の他の部分にまで影響を与えるくらいデカくて深かった。
頭の中に小さな杏花がいっぱい住んでいるみたいだったが、一人ずつでもいいから出ていってほしいと思っていた。なのに、一人も出ていかないどころか俺の頭の中で増殖を始め、その穴の中で暮らし始めた。
自分がこんなにも未練たらしく脆い男だったなんてがっかりだ。一匹狼が聞いて呆れる。
「無駄にごちゃごちゃ考えてないで好きなら一緒にいればいいのにー。全く理解できないわー。ショートケーキの上の苺食わないで残すくらい理解できないわー。」
玲央はストローでオレンジジュースに入っている氷をいじりながら言う。ジュースを薄めようとしているのだろうか。
「そりゃ、出来ねーだろ。お前みたいな天才イケメンには。」
「そうだね。俺、天才イケメンだもんね。」
玲央はいつものように嫌みなくさらりと言いやがった。こいつは思い悩んだりすることがあるんだろうか。