メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
「・・・俺はさ、玲央みたいな才能ねーし、色んなものそぎ落として全部の力を時計にかけなきゃなんないんだよ。」

「キョウのこともそぎ落とすってこと?キョウってゆるふわ過ぎて何考えてるのかイマイチわかんないけどさ、ハルのこと好きだと思うけど。ツムもそう思うっしょ?」

「そうだね。そんな風に見えたけど。」

「・・・一緒にいる間好意は持っていてくれたかもしれないけど、そういう『好き』じゃねぇよ。万が一、俺のあいつに対する想いと同じ想いを持ってくれていたとしても、それは一時的なことだ。あいつはこれからたくさんの男を知る。世の中俺よりいい男だらけだ。俺は収入だって安定しないし・・・ちゃんとした会社員とか公務員とかいくらでもいるだろ。」

俺のその言葉に玲央は顔をしかめた。本当にどんな表情をしてももれなく絵になるやつだ。

「やっぱり理解できないな~。今一緒にいたいなら告る、それだけだよ。付き合ってからキョウが他の男好きになって別れたらその時泣き叫べばいいじゃん。失うこと恐れてたら恋愛なんて出来ないよ。」

「だから、俺には恋愛なんて要らねーんだよ。ハコイリギフトとだって、純粋にビジネスとして繋がって行きたいんだよ。」

玲央の言うことが正論過ぎて動揺し、語気が荒くなってしまう。みっともないことこの上ない。

「や、もう今更無理でしょ。ハコイリギフトとやり取りしてたらキョウのこと忘れられるわけないじゃん。別れを選択するの遅過ぎでしょ。もう手遅れなくらい深く恋に落ちちゃってんのに。」

玲央のその言葉は俺の胸をぐさり、と刺した。ショートケーキの上の苺をフォークで刺すみたいに。気づかないようにしていただけで自分でも薄々わかっていたことだった。
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