メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
無事卒業できることになったら、会社の研修が始まるまではバイトを精一杯やってお世話になった恩返しをして、そして就職したら新しい生活が待っている。正直不安が80%、期待が20%だ。でも、以前の私だったら不安が99%だったと思う。

暖人と出逢えたことで、勇気を持って思いきって飛び込めば、その先に今まで知らなかった素敵な世界が広がっていることを知ったから。

彼のことを思い出すとまだまだ胸が痛い。しかも今目の前に暖人の幻が見える。かなり重症だ。彼と会わなくなってからあまり眠れていないし疲れているのかもしれない。大好きなお酒もしばらく飲んでいない。今日は初詣の後爽ちゃんと新年会をするから今日くらいは飲もうかなという気持ちもあったけれど、やはりやめておいた方がいいかもしれない。

「・・・おい、大丈夫か?」

───やだな。暖人の声の幻聴まで聞こえる。爽ちゃんに謝って今日は初詣だけにして帰った方がいいかな。新年会はまた後日でも───。

そう思っていると頬に冷たいガサガサした手が触れて体がビクッとなる。

「なぁ、どうした!?」

「・・・は、暖人!?」

目の前に現れた暖人は幻ではなかった。
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