メレンゲが焼きマシュマロになるまで。
これから初詣に行く神社は駅を挟んで暖人の家と反対方向だった。最寄駅のプラットホームに降り立った時、ほんの数ヶ月まで頻繁に見ていた風景をひどく懐かしく感じ、そのノスタルジーが胸を締めつけた。

「・・・えっと、あ、新年あけましておめでとうございます。」

「・・・おめでとうございます。」

「・・・。」

───この後なんて言えばいいの?『今年もよろしくお願い致します。』は私達の現状からして違うし・・・でも、社交辞令的に言うべき?それとも、『昨年中は大変お世話になりました。』?それは年賀状だけ?

私が口ごもっていると暖人が静かに口を開いた。

「初詣に来たのか?」

「うん。そこの神社の夏祭り、赤ちゃんの頃から来てて、初詣も毎年爽ちゃんと来てるの。あ、今日お祝いの時計渡すよ。 絶対喜んでもらえるよね。楽しみだな。」

「・・・そうか。」

二人の力作の時計が入っている紙袋を掲げて見せてみたが、暖人の顔は少し疲れているように見えた。仕事が忙しいのだろうか。オーダーメイドを頼んだりして負担になってしまったのかもしれない。ただ作るだけではなく、私に教えながらだったし、毎回お茶までしたりして彼の貴重な時間をたくさん頂いてしまった。

申し訳なかったなと思いつつ私の正面に立つ彼の顔を見上げていると、じっと目を合わせてきたので慌てて口を開く。
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